愛されたいのはお互い様で…。
・プロローグ
ブー、…。はいはい。あっ務だ…。もう出るってことかな。
【ごめん、まだ会社なんだ】
あ……う、ん…仕事って事よね。今日も忙しいのかな。じゃあ…。
【大丈夫、私もまだ会社だから】
こっちも仕事って事で。それがいいでしょ…。
【なんだ、そっちもまだ終わってなかったのか】
【うん、ごめん。何だか長引いちゃって。丁度、今、連絡しようかと思ってたところ】
…。
【じゃあ、今夜は、なしだな】
【うん、お互いにドタキャンって事で。両成敗よ】
【ああ、そうだな。まだ掛かりそうか?遅くなりそうなのか?】
【ゔ~ん。…】
【何だ?自分の仕事なのに解んないのか?とにかく、天気も悪いし、帰り、気をつけて帰れよ?】
そう…、外は雨が降っていたんだった。どしゃ降り。はぁ…憂鬱…。
【うん、有難う。頑張ってなるべく早くあがる】
【ああ、頑張れ。今日は悪かったな。じゃあな、また、だな】
【私もごめん。まただね】
……はぁ。務、会社に居るのかな…。本当はどこからの連絡なんだろう。なんて、ね…。
きっと今日は駄目になるって…そんな連絡が来るとは何となく思ってたけど。今日も、だ。…予感的中しちゃった。んー、誰と、どこに居るんでしょう……なんてね…。それとも、本当にまだ仕事なのかな。多分…仕事だよね。そう思わなきゃ。……駄目駄目…変に勘繰っちゃ。会社だって言ってたじゃない。
私は仕事はとうに終わってる…。だって約束があるんだから。何としてでも終わらせるでしょ?そしたら余裕で終わっちゃって…約束の時間には早かったから、まだ会社に居た。
雨も降っていたから、出る頃には小降りになればいいなと、何となく待っていたところだった。
私もまだ仕事だって言った方が、断る貴方の負担は少しは軽くなったでしょ?
気を遣う可愛いところも少しはあるんだからね…。
もし…、約束をドタキャンしたいくらい、私と会うことが煩わしくなっているのなら…、もうそういうことだって言ってくれていいのに…。
私は全然構わないんだよ?…。変に気を遣ってはっきり出来ないことがあるなら、そんなのは嫌だから、言ってほしいくらい。…はぁ。
こんなキャンセルの仕方でも、思いやりとか、優しさになるんだろうか。