愛されたいのはお互い様で…。
【だとしても、もう今は必要ない事だ】
…。
【どうだった?】
【あのなぁ…。もういいだろ?】
【いいから、教えて?】
【ボディーソープを替えたら、後は良かったかな。詳しい部屋の様子なんて簡単に説明は出来ない。色々見たんだ…自分の目で見るのが一番解るだろ。だから、メールでなんて話さないぞ。
ボディーソープ、替えればいいのにって言ったら、俺が利用する時だけ違う物にしときますって、嘘か本当かそう言ってたよ】
【そう。良かったんだね。レストランの食事とかも?聞いた?試した?】
【レストラン?ああ…まあ…良さそうなの、あるんじゃないのか?】
【そこに強引に夏希さんがついて行ってたのね】
きっと明日は何してるんですか?とか、務がお手洗いに行っている時に携帯見たりして、務とホテルの人とのやり取りなんか事前に知ってたんだ。この想像は間違ってないと思う。
【ああ、そんな感じだ。…仕事上の勉強だとか、人生の参考だとか、とにかく色々理屈を言ってだ。一緒に泊まったりしてないからな。部屋には、夏希は朝来たんだ】
【うん、…解ってる】
……解った、が正しい。
……下見。…はぁ。本当、話せば解る事だったんだよ。務も中途半端に説明して……。はぁ。疑ってかかる私もいけないんだけど…そりゃあ本人的には問題はないと思っているだろう。何をしてるか解ってるんだから。説明されない私は…想像で誤解を生む事ばかり…。
【もう、聞くことはないかな。有難う】
【もうないのか?】
【うん、終わり】
【じゃあ、俺が聞く。嫌なら答えなくていいから】
【うん】
何だろ…。
【昨夜は靴屋さんのところか?】
迷いはない。嘘も誤魔化しも務には言いたくない。
【うん。務、部屋に来たの?】
【紫はもう俺に聞くことはないんだろ?だからその質問には答えません】
ふー、そうなのね。送ったメールに返信がなかった事もあって、話をしようと来たかもしれない。
【もう、そういう関係なのか】
【そこまで聞く?】
【その返し…そうなんだ】
【うん。否定はしないよ?】
【好きなのか】
…務。
【嫌じゃ出来ないでしょ?】
【好きなのか】
…務。
【まだ始まったばっかり】
【好きなのか】
…務。
好き、と言う言葉を発しなくても、そうだと思ってる…。
言わなくても解っている…だけど聞いている。
私の中では、聞かれた言葉に答えるなら、今はまだ、惹かれている、の方がしっくりしている…。