愛されたいのはお互い様で…。
ブー、…。
【紫さん。お仕事は終わりましたか?もう部屋に帰られてますか?】
あ、伊住さん。
【部屋に帰ってます】
【そうでしたか。お帰りなさい。遅刻はしませんでしたか?】
【はい、大丈夫でした】
【もう…、紫さんが居ないと寂しい病にかかってしまいました。お帰りなさい、と生身の身体を抱きしめて言いたいです。朝ご飯は一緒でしたが、昼も一人、今も一人です。寂しいですね】
…伊住さんて人は。今だけじゃなく、ずっとこんな風に自分を曝け出すのだろうか。
【何言ってるんですか。昨日までは一人で大丈夫だったでしょ?】
【この家で暮らしませんか?】
え、あ、…。
【返答に困る事を言ってはいけませんね。私としたことが急いてしまいました】
…。
【そうですよ。急いては事をし損じると言いますよ?】
【それは…何とも不吉な言葉ですね】
【そんなに重くとらないでください?諺を言ってみただけですから。
それに伊住さんは、慌てず騒がず、動じない人じゃないですか。物事を急く人では無いですよね?】
【少々焦っています】
…どうしたんだろ。
【よく聞いてみればいいと言った手前、言えないのですが、貴女の心が揺れやしないかと心配です】
私の心…?もう揺れる要素は何もない。務とは終わってしまったのだし。
【もっともっと。今は紫さんと一緒に居なければいけない時なのです。何故、今日は月曜だったのでしょう。貴女を仕事に行かせなければ良かった】
何かあるの?…。
【よく解らない事を言っていると思ってますよね。何故かは言えません。紫さんにヒントを出してしまうから】
…ん?言ってる事は違うけど務と似たようなニュアンスに…。
何かを考えたら、解る事があるの?