愛されたいのはお互い様で…。
「…務、…ん」
「…ん…何…」
「見えないモノが見えたりした事…ある?…」
「…何、…怖い話か?薄暗い部屋、ベッドの中で話す事か…怖いだろ…。俺の部屋だ。止めてくれ」
滑らかな裸の身体…、抱き合っているのに、わざとみたいに務は胸に顔を埋めて来た。
私、少し疑心はあるのに…こうしていつものように身体を合わせて……。
「ぁ務…例えば、居ないはずの人が居たり…」
胸に触れる務の頭を抱いた。
「怖いな…怪談話なら本当、止めてくれよ。俺は…そんな経験はないな……ん…」
あ。……務が私を抱き直す。唇が肌に触れ続ける。
「ぁ…そうよね。私も出来る事なら、見たくはない…かも」
「…ん?…ところで、靴屋ってさ、あそこら辺のか?」
「うん、ぶつかったでしょ?私も知らなかったんだけど、あの横の細い路地を奥まで入って行ったところに…偶然見つけたの。オーダーメイドのお店みたいよ…」
声を掛けられたのがきっかけって話すとややこしくさせてしまうから。こんな感じで大丈夫よね。
「ふ〜ん、なんて店だ?」
「…あ、名前…、何も見なかった」
「なんだそれ…フ、ま、紫だから仕方ないか…」
んー、て、長いキスをされた。ほんのりとワインの香りがする。自分では気がついてないのかな。
「ぁ、ん…でも確かに行ってきた。作った靴が並べてあって、どれも素敵だった。履き心地もね、凄くいいの」
「へぇ。オーダーって、そういうもんだけど、その分何だか高そうだな…」
「そうかも知れない。実際、値札なんか付いてなかったから。個人との話なのかも知れない」
棚に置いてあったのは、あくまでデザインの参考や素材を見せる為の、本の一部といったところだろう。
「ふ〜ん。……最近、今日もだけど…忙しいのか?…ん。今日も仕事、ん、遅くまでだっただろ…ん、…ん」
髪を両手で掻き上げられるようにされ、何度も口づける。…相変わらず…甘いキス。酔ってしまいそう。
「う、ん…。今日は私の段取りが悪かったのかな…色々…」
実は終わってましたけどね。あんなに長時間、靴屋に居る事になるとは思わなかった。
「そうか、その日…突発的な事も…あるからな…。大丈夫か?嫌にならないか?…よっ、…と…紫…」
身体を上にされた。
「う、ん…ぁ、務…ゃ」
「ん゙、ん、何だか…、久し振りな気がする………紫の、中…」
「…も、う、…ん、務、ん…あ」
「…気持ちいい」
他の人なら"最近"有りだったの?久し振りってどの程度の事を言うの…。もっと会いたいって、私が言えばいいのよね…。
「…もう。今の…、変に聞こえる。あの言い方…」
胸に腕を付いた。
「何が?変か?…そうか?そんな言い方したっけ…」
「…もう。…私の他に、そんな事する人が居るみたい…、そんな風に聞こえたんですけど」
言ってみた…。
「ん?……ん゙そうか?ハハそれは勘違いだな…カロリー、消費しないとな…遅い…夜御飯分の……はぁ、紫、腕…抱きついて…」
腕を掴まれて身体に回された。ねえ?はっきり否定はしない…の?してくれないの?…私の他に、するヒトが居るの?なのに、私と平然とするの?
抱いたまま務が起き上がって胡座をかいた。また腕を掴まれて首に回され直した。…あ、身体…務と一緒に…揺れる…。
「ゃ、ぁ、もう…、馬鹿…、じゃあ食べなきゃいいでしょ。…私は…消費しなくていいの……はぁ。もう…無理…」
「…ん、ハハハ、そうはいかないのが…欲望ってやつだろ、ん……紫…ん。欲しいモノは食べる…。俺は紫しかいない。いくらだって食べたいんだ…。実際、久し振りだろ?…ん…もう一汗かいたら一緒にシャワーしよう……紫」
背中に手を当て身体を捻りながらまたゆっくり寝かされた。務…、今夜私が見たのは幻だったって言うの?…。
「…もう、務の馬鹿…」
「ん?…ん、怒るなって…。なんだ、もっとか?」
もう…馬鹿…。