愛されたいのはお互い様で…。
・三者三様の…
「先ずは…、お疲れ様」
「はい、有難うございました、お疲れ様でした。長いというか短いというのか、お世話になりました。有難うございました」
「いや、偉そうに言うつもりは無いが、よく頑張ったな。泣き言も言わず、よく堪えたよ」
「…はい」
…あ。ちょっとだけ、頭をポンとされた。…はぁ…こうして、仕事に関係する事なら、以前と変わらず接してくれる…。
「来週から独り立ちだな」
「あ、はい。…頑張ります」
「うん、大丈夫だ。一緒に回ってる時から、頼って仕事をしている感じでは無かったから、夏希ならやれるよ」
「…有難うございます」
「よし、これでもうライバルだな。うかうかしてられなくなったな。俺なんか直ぐ抜かされるよ」
「そんな事は無理です。敵いませんから」
「弱気も遠慮も駄目だぞ。自分で決めた仕事だろ、納得出来るまでは辞めるなよ?仕事は仕事だ」
「はい。それは、…辞めません」
仕事は…仕事だ。公私混同はしない…。
「そうだ、頑張れよ。あ、お代わり頼むか」
葉月さんが軽く手を上げ、注文している。
話し方も気配りをしてくれるところも変わらない…。何も、変わらない。
テーブルにグラスが来た。
「ほい」
「あ、有難うございます。…あの…葉月さん」
「ん?」
「すみません、話というのは本当は仕事の事じゃない話なんです…、あの…してもいいですか?」
「…何だ」
仕事の事でと言わなきゃ今のこの状況は作れない…渋々聞いてくれるってことだろう。そうでも言わないとこうして連れて来てくれませんよね?
「…」
「…仕事の事だとハキハキしてるのに、そうじゃないと途端に口ごもるよな夏希は。まあ、今は何を話すにしてもきついか…」
「……すみません。普通に話があると言っても無理だと思ったので。仕事の話だと言いました。今日がちょっとした区切りの日だからって事ではないですが、きっかけとして…利用しやすいと思ったから…」
…利用ね。…。
「確認させてください。葉月さんは今、フリーなんですよね?」