愛されたいのはお互い様で…。
「紫さ〜ん!」
「あ、伊住さん…」
「今日もこっちですか?…」
「はい。…でも」
まだ、中途半端には行けない…。
「いいんです。中々来てくれないから、結局こうして私が来ちゃってますから。荷物、一つ持ちますよ」
「あ、はい、有難うございます。…フフ」
「ん?…ちょっと重いですね、これ」
以前と比べたら、買っておく量が少し増えたからですよ…。
「はい。あ、この荷物、さっき忘れそうになったんですよ?」
「へぇ、どうして?では無いか。そうですね…大方、そのサンドイッチを買ったお店で話し込んでいたら、置いてきたんですね?」
「その通りです、…恥ずかしかったです」
相変わらず私の事、よく解りますね。
「それで、今夜はそれがご飯?」
「はい。遅くなると直ぐこうして頼ってしまいます。伊住さんは?」
「はぁ…食欲不振ですね。一人では食べられなくて…夏バテですかね」
…。
「そんな事言って…。昨日だってうちで一緒に食べたじゃないですか」
「だから。一人だと食べられないから来てるんじゃないですか。それに紫さんを一人にしておくのは心配ですからね」
…心配には、色々含まれていますよね。
「…サンドイッチ、二人分買ってますよ。しっかり食べてくださいね」
「はい。サンドイッチも紫さんも、しっかり食べさせて頂きますよ…ご心配なく。心も身体も健康が一番ですから」
…。
「…伊住さん」
「はい?」
「…人の目がありますから」
「いいじゃないですか。こうしてたらその内、ここら辺では“ベタベタ溺愛してる男”が噂になりますから、何してても大丈夫になりますよ。
早くうちに来てくれたら、こういうのは無くなりますよ?」
…荷物を持たない方の腕を腰に回されていた。そして、ぴったりくっつくようにして歩いていた。
伊住さんだけでも元々目立つというのに…。
「私はキスしながら歩いたっていいくらいに思ってますけどね?」
「あ……それは駄目です」
「ハハ、じゃあ、これはいいんですね。
早く帰りましょう。お風呂、一緒ですからね。早く、早く」
「…もう、…伊住さん」
あの男が靴屋の男か…そうだよな。
はぁ…流石…べったべたのべた惚れだな。