愛されたいのはお互い様で…。
「では、私は戻りますから、朝ご飯、ちゃんと食べてから出勤してくださいね」
…。
「…紫さん?…また、…二度寝、三度寝になりますよ?駄目ですよ?起きてください」
…。
「解りましたよ…これならどうです?…」
顔を押さえて長く口づけた。
「フ…わざと目を開けませんでしたね。いけない子ですね…。起きてくれないから一緒に朝ご飯食べられなかったでしょ?」
「……おはようございます」
ギュッと抱き着かれた。
「あ…どうやら今朝は、甘えたい日のようですね」
背中を撫でた。
「…はい」
「はぁ…これは…攻守交代ですね。もう少し居ましょう」
「はい」
抱きしめたまま少し横になる事にした。…こんな風に甘えてくれるなんて嬉しいじゃないですか。
朝、昨夜の伊住さんの話を思い出していた。
一日一日を大事に思う事。ずっと一緒に居ても別れはどんな形であれいつかは訪れるモノ。それは思いがけず早いかも知れないし、遅くても充分だと感じられるとは限らない…。
もしかしてって、思ってしまった。伊住さんの話し方は…何だか、突然消えてなくなりそうで恐かった。それは、あってはならない事だけど、例えば病気を抱えているとか…何かあるのではないかと思ってしまったからだ。
こんな予感は当たって欲しくない…。考え過ぎだろうけど。
「…さあ、もう起きて支度した方がいい…」
「はい」
「では、行ってきますね」
「はい、行ってらっしゃい」
ギュッと抱きしめた。こうして送り出す…朝は何だか寂しい。
「…伊住さん、私、伊住さんの部屋に行きます」
「紫さん…」
「ずっと一緒に居たいです。伊住さんと居る時間を大切にしたいと思います。週末、行きます、いいですか?」
「はい…あぁ、嬉しいですね。…気をつけて行きますからね。嬉しくてコケてしまわないようにしないと。
足元に気をつけて行かなくてはいけませんね」
…伊住さん。クス…本当に、可愛い人だ。
「行ってらっしゃい」
抱き着き直した。
「はい…。紫さんも行ってらっしゃい。…では」
チュッと頬にキスをされた。
「んー。キリがないので行きますね」
「フフ…はい、行ってらっしゃい、気をつけて」