愛されたいのはお互い様で…。
・エピローグ
「おはよう…紫」
「…う、ん、おはよう…」
…ん…あれ。…務の部屋だ。目を覚ました先に膝を付いて覗き込む務の顔があった。
「務…?」
いつ泊まったんだろ。…ん?…え?…あぁ、そうだった。
おでこに手を当てた。
「あ、大丈夫か?痛むのか?…紫、凄く良く眠ってたな」
「そう?」
頭は、痛いとは違う…何だろう、ナニ…何か……足りない気がする。
「…務、今日、何曜日?何日?」
「今日は…9日。土曜日、だろ?」
土曜日?…。あ、…そうだ。…そうだった。
「ご飯、出来てるぞ。今、持って来るから」
「え、あ、いいよ。そっちに行くから」
「いいからいいから、…休みの日に、こういうのもいいもんだろ?」
ゆっくりベッドに起き上がり座った。まだ何となく頭がぼんやりしてる。無意識に手で押さえた。
トレーに乗せた朝食を持って来てくれた。
「ん?調子悪いのか?大丈夫か?しんどいようならまだ横になっとくか?」
「ううん、大丈夫」
「スープから飲むか?ゆっくり…熱いからな…」
「…うん、有り難う」
渡されたマグカップのスープに息を吹き掛けた。
かぼちゃのスープ…これは、私が好きな物。美味しくて好きなんだけど、急ぐと熱いから火傷してしまう。でも、そんなに熱くはない。…出来てから時間が経ったのかも知れない。
きっと務は私が起きるのをじっと待っていたのかも知れない。
…何だか、…何だろう。忘れ物をしているみたいな、…変な気がする。心に何か…欠けたモノがあるような…。寂しいような…切ないような。ザワザワする感じ…。
「まだ熱いか?大丈夫か?はい…、クロワッサンサンド、作ってみたんだ」
カップを渡し、代わりにパンを受け取った。務が代わりにふぅふぅ息を吹き掛け冷ましていた。もう、そんなに熱くないよ?心配性なんだから。
飲むヨーグルトの入ったグラスを渡された。
こうして務と一緒に暮らしているのに…。何だろう。目が覚めるといつもこうだ。ざわざわする。
「…冷たい、美味しい…」
「そうか、そうだよな…ごめんごめん。先に熱いのはきつかったよな。…美味しいか、…良かった。
…なあ紫…後で公園にでも行って見ないか?」
「…公園?」
…。
「ここら辺じゃなくてさ、ほら、紫の部屋の近所の公園だよ」
「あ、うちの近くの公園?」
「ああ、そうだ。…あるだろ?」
「うん。珍しいね、務が公園に行こうなんて。初めて…よね?それに今日は…土曜日だったよね。何かプライベートな用は無いの?大丈夫なの?…私ならいいんだよ?休みの日に一緒なんて…本当、珍しくない?」
紫…こんな時でも、やっぱり同じ事を…。気を遣って言うなんて。
…いいんだよ、って言っても…紫は…解らなくなるだろうけど。
「ん?これからは、そんなのもいいんじゃないのか?ただ公園に行く、ただ歩く、話をする…みたいな事。…必要だろ?俺達って」
「…うん。…そうだね。務が時間があるって言うのなら、私はどこでも…、一緒ならどこでも何でもいいよ。本当にいいの?」
あぁ…紫。そうだよな。そうしていたら良かったって、話しただろ?…。