愛されたいのはお互い様で…。

何だか…暗いから怖いんじゃないような気がした。

細い路地を歩いた先、急に前が開けた。
…な、に…ここ。…こんな…。

「…あ、務。ここ…、何だか、おとぎの世界みたいね…」

何だか解らないけど引き寄せられてる気がする。…でも…それが怖い気もする。

「そうだな。…なあ、…入ってみないか?」

「う、うん。いいのかな」

お店のような建物だけど…。

日傘を畳んだ。
手を繋いで進んだ。

「凄い緑…こんなところに…森みたいじゃない?…花も咲いてる…綺麗な庭…」

建物の前に来た。

「…ドア、開けて入ってみよう」

「…う、ん」

何だか急にドキドキする…。どうして…。こんなに苦しい…の。

階段を一段一段、ゆっくり上がる。

「こんにちは…」

ドアを開け声を掛けた…誰も居ないのかな。

「務、留守かな……え、務?」

…務。務はまだ外に居た。

「紫、おとぎの世界だ。俺はここに居るから、一人で入ってごらん…」

…紫。辛いかも知れないけど、伊住さんを思い出せ。

「うん…。あ、でも務も来てよ?居てよ?」

「ああ、…ここに居るよ」


失礼しますね…。棚に沢山靴が並んでる…てことは靴屋さんみたいね…こっちはカフェ…。あ…可愛い…椅子…。

…この靴……?。私の靴と色違い…。デザインが全く一緒なんだ…ここで買ったのかな。
このモスグリーンもいいな…。
…私、…この靴…買ったんだっけ。…解らないのに…いつも履いてるなんて。…これ。どうして同じなの…。ここで買ったのかな。
これは…黒いパンプスの色違い。考えてる時、オークもいいと思ったのよねぇ。……え?…オークも?今の…何?何かの映像が…頭に浮かんだような。
頭を抱えた。

「…いらっしゃいませ。お気に入りのモノがございましたら、どうぞ試してみてください。スツール、出しましょうか」

…え?あ…お店の人?、……病院に、居た、人…だ。ここは、この人のお店?どうしてそんな…顔をしているの?何か苦しいの?
この…お店、この感じ。前にもあったような…。解からない。でも何だか…怖い。…務…、どこに行ったんだろう。傍に居て…何だか怖いよ。…務。務?

「務………あ、あの…勝手に入ってごめんなさい」

お店の人…。傍に居る。

「…いいえ。店ですから、大丈夫ですよ。もし、足を綺麗にされたいと思われているのなら、こちらをお使いください。水もお湯も出ますから」

…この…声。…え?……怖い。…務。ここ…何だか…怖い。動けなくなった。
自分の身体を抱きしめた。…身体が震えた。
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