愛されたいのはお互い様で…。
・雨の日はレインシューズ

傘は持って来ていた。天気予報はチェックしてるから。だから頭から濡れる心配はない。ただ、足元の用意は特にしていない。だから、外に出たらパンプスどころか、足元がかなり濡れてしまうだけだ…。

今夜のご飯の約束は、今から15分後にはお店で会ってるはずだった。
久し振りに会える。本当に、久し振りにだ。そう思っていたけど。でも今なくなってしまった。

男女のつき合いって、最初は好きが濃いから、意識して、もの凄く努力をしてるって事かな…。待ち合わせには遅れないように向かうし、それが、少し慣れて来て、少し遅れるけど行くから待っててになり、そして、長くつき合ってくると、都合が悪くなった…ごめん、がスルッと言えるようになる…事が…ある。そして、それが増えてくる。……んー。
でも、気遣いの問題だと思う。つき合いが長くなってもルーズになる必要はないし、相手に対する思いやりを持ててるかどうかじゃないだろうか。
仕事だと言われたらそれは仕方ないんだけど、それを理由に断られてしまうパターンが増えてしまうのは理解はしても寂しい事だ…。

何だか、待ち合わせ一つ取っても、緊張感だとか、慣れだとかってモノは、月日の流れにお互いに対する気持ちの推移がよく出てると思う。

ドキドキしている事に段々慣れてきて、信じているから融通が利くような関係性になって来て…。嫌いって訳じゃないけど、初々しいドキドキがなくなってしまって…。何でも解り合えてるって言えば、いい関係性だと思うけど。

ふぅ…、止みそうもないし、もう帰ろう、か、な…。足が濡れても帰るだけだしね。


会社の通用口で立ち止まり、空を仰いだ。銀の筋を作りながら雨が容赦なく落ちて来る。
足を踏み出すと同時に傘を開いた。ばらばら音が鳴り響く。大きな粒だ。
アスファルトに水溜まりを作り、勢いよく跳ね上がる滴は、早い足取りのパンプスを瞬く間に濡らした。解ってはいたけど、はぁ…もう最悪…。
ぐちゅぐちゅと濡れた状態は、歩いていても決して気持ちの良いモノではなく、どこか鈍よりとしていた気持ちを更に重く沈ませるモノになった。

この先を暫く進み角を左に曲がり、更に進んで行けば、今夜約束していたお店がある。

勤務先が違う私達。務がいつも気を遣ってくれているのはよく解っていた。仕事帰りのご飯の場所は、私の会社に近いところをチョイスしてくれる事が多かったからだ。そのさりげない気遣いは嬉しかった。

…約束も消えた。結局は何かしら食べないといけないのだけれど、一人だし…、改めて行くはずだった店に寄るつもりも端からなかった。
ただ何となく、前を通ってみただけだった。
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