愛されたいのはお互い様で…。
【一人で行ったら何だか本当、ご飯食べに来たって感じになるね。務は何食べたの?】
【あー、何だったかな】
…。
【私はね、パエリアとサラダ。アルコールも飲まず、ジンジャーエールだったよ?】
【あ、思い出した。鯖サンドと、ムール貝の蒸したやつだ】
【ムール貝美味しいよね。シャンパンにもよく合うし】
仕事の途中ならアルコールは無理だったよね。
【そうだな。あと、オイルでぐつぐつ煮たやつも食べたな】
【それも?いいな…食べたかったな】
【今度、食べたらいいだろ】
【そうね】
ムール貝も、オイルのも、二人前からじゃないと注文出来ないんだよね?…。あ、オイルのはアヒージョだ。
【私が帰った丁度あとくらいに来たのかな】
【何時くらいだった?】
【んー、何かよく覚えてない。時間言ってくれたら、その時間一緒にご飯出来てたのに】
【急に出るから時間は解らないよ。それに紫はもう帰ってるって言ってただろ?】
そうだ、務の事は見なかった体で済まそうとしたから…。
だから安心して二人で居られたんでしょ?
…あー、どうしても、この部分が突っ込んで聞けない。
【どこか、外からか?】
…え?どういう事?探り合い?
まさか、今うちの部屋の前に居て、インターホンを押しているとかでは無いよね。
出ない事を確認して聞いてるのでは無いよね。
…。
【今、ちょっと、買い物に出てる】
外は外。でも嘘をついてしまった。
【そうか】
…どうなんだろう。
【務は?部屋なの?】
…。
【俺も実は外なんだ】
【そうなんだ】
それが私の部屋の前って事じゃないよね。どこ?…恐い…解んない。
午前中に、もう出掛けてるの?部屋に居るって言ったら、まずいから?
いきなり来られたら困る事でもあるの?
【務?電話に変えていい?】
…。
【どうした】
【何だか、声が聞きたいなって思って】
【馬〜鹿。お互い外なら、話し辛いだろ】
【そうか、そうだね】
…。
葉月務の番号をコールした。
RRRR…。
「…はぁ。…はい」
…出た。