愛されたいのはお互い様で…。

「務?あー、声、聞けた。良かった、それだけ。長く話さなくてもいいの」

「なんだよ。だったら切るぞ?人の目があると話し辛いから」

「うん、じゃあね」

「あぁ。………(葉月、さ、ん?)…ぁ、馬鹿、…(しー?)…あ、じゃあな」

プツ。プー、…。


約束だからお昼ご飯を作ろうと思った。冷蔵庫を覗いて見た。伊住さんは一人で居てもきちんとめり張りのある暮らしが出来ているんだなと思った。男女差別とかでは無く、男の人なのに、きちんと整理整頓して、食材はとても充実していた。

こんなに色々あっても、私に作れる料理のレパートリーは高が知れている。
ごめんなさい。手の込んだ物、作れなくて。失敗無く無難に食べさせてあげられる物は、オムライスかな。お昼ご飯だからいいかな。卵を使うから、焼きプリンも作っておこうと思った。

ご飯の予定は1時くらいって言ってた。今作ったら、食べる頃には冷めてしまってるな…。
オムライスを作り、ガスオーブンを使って焼きプリンを作った。固くてかっちりしていて苦味のあるカラメルのプリンが私は好きだ。


粗熱の取れたプリンは冷蔵庫に。オムライスはラップを緩く掛けてテーブルに置いた。

バッグの中から手帳を取り出した。切り取る事の出来るメモの部分は、何だか置き手紙を書く為にあるみたいだ…。
昔、務の部屋で、こんな風に走り書きした事を思い出した。…務。

『用がある事を思い出しました。お口に合うか解りませんが、冷蔵庫にプリンも入れてあります。昨夜はお世話になりました。お仕事の邪魔になるといけないので声を掛けずに帰ります。紫』

…フ。真っ黒。微妙に長くなっちゃって、文字で紙が一杯になっちゃった。

お邪魔しました…。住居の部分の玄関から出て店側になる前側に出た。
外に目を向けていたら、帰るところ、見られてしまうかも知れないな。
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