愛されたいのはお互い様で…。

何とか身支度を整え、務の部屋を訪ねた。

本日二回目だ。

ピンポン。

「はい」

…居た。

「ごめん、ちょっと遅れたでしょ」

「そんなの気にしなくていいよ、適当で。入れよ」

「…うん」

部屋の感じ…特に違和感はないかな。

「芸が無いとは思ったけど、通り道だったからサンドイッチ買って来たぞ。いいか?」

「あ、うん、大丈夫、有難う。あ、飲み物、珈琲入れるね」

「あ、うん、サンキュー」

…あれ。

「務?氷、切れてるみたい。ホットにするね」

「あ゙あ゙。悪い…、うっかりしてたよ」

冷凍庫の製氷皿、使って水を入れ忘れたんだ。綺麗に空だ。ストックもない。

「こういう事よくあるよね。飲むことが優先しちゃって。飲んでたらお水入れるの忘れてるって」

「それだよ」

マグカップに珈琲を入れ運んだ。
でも、一人分なら半分くらいしか使わないんじゃ…。それを二回繰り返すかな…。

「はい」

リビングのテーブルに置いてソファーの前に座った。暫く置いて冷まさないとね…。

「そのワンピース、似合ってるな」

え…。迷う程選びもせず、慌ててただ着て来たんだけど。

「え、そう?一応有難う」

珍しい、褒めるなんて…。

「何だ一応って…」

「だって…、これ、初めて着たワンピースじゃないよ?前着てた時は似合ってるかどうかどうでもよくて、今日は似合ってるなんて言うから…」

「…そうか。そんな…前だって似合ってたさ」

そんな…そうかって…気のない返事。今日は…どういう心境?女性の着ている物は、どこかしら褒めなさいとでも助言されたのかな。少々機嫌が悪くても喜ぶからって。…だって、今までこんな、取って付けたような事、言わなかったじゃない?…いけない。何も話して無い内から心がドス黒くなってる。

「頂きま〜す。食べるよ?」

「…ん?ああ」

務…心ここにあらずって感じだよ?…。
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