愛されたいのはお互い様で…。
【無理に連泊をお願いしていましたが、キャンセルでお願いします。紫】
はぁ、惑わせても、惑わされてもいけない。
…傘はもう、…諦めよう。あの店には行けない。
濡れない為の物なら、それだけを果たせるモノで充分だ。なまじ、お気に入りにする程のモノを探して手にしてしまうから、諦められなくて手放せなくなるんだ。
最初から無かったと思えばいいし、雨が降ってからだって買える…間に合う。
黒い靴がもし出来上がったら、代引きにして貰おう。
暫く様子を見ても、もし、ワインレッドの靴だけなら、請求書を送って貰う事にしよう。明確な住所は顧客カードに記入してあるのだから。
例え転居しても、届け出をしておけば、確か一年は転送してくれるはずだ。
こんなに素敵に作ってくれて、しかも、手を着けてない振りをしてたなんて…。
傘は諦めたのに、代わりに凄く愛着の湧きそうなモノを手に入れてしまった…。
既製品なら返品してたかもな。
これは私の靴だから、私以外の人には渡せない。
夜になってメールが来た。仕事が終わったのだろう。
【泊まると決めてあったものを断るとは。当日ですからキャンセル料、発生させますよ?笑】
あ、いきなり…フ、…はぁ。
【お支払いしません】
【頂きにお伺いしますよ?】
【断固、払いません】
【では何が欲しいですか?】
?…、急に変わった。私が要求するモノ?
【①お気に入りの傘②出来上がった黒い靴③秘密の贈り物】
…なるほど。
【どれも要りません】
靴まで欲しく無いなんて言ったら、駄目なんだけど。
この返事。どれかが欲しいなんて言う事は出来ない。③はよく解らないけど、多分どれも選べば、伊住さんのところに行く事になる…。