愛されたいのはお互い様で…。
【では、本当の事は解ったのですか?】
…。
伊住さんにはもう何も話してはいけない。聞いて貰ってはいけない。気持ちが傾いてしまいそうだから。不安定で弱ってる時って、…とにかく駄目だ。
【結局は、私の疑う気持ちが無くなればいいだけの事だと思います。最初からそれなんです】
…。
どうやら返信はなさそうだ。…ふぅ。
少し部屋を片付けようかな。
こんな時間にあまりごとごと音を立ててもいけないけど。
ソファーには箱にしまいかけたままのパンプスがあった。
…はぁ。よく解らないけど…、凄く早く作ってくれたんだ。
取り出して揃えて手に持って眺めた。
本当…、好きな感じに仕上げてくれた。凄くいい。
ピンポン。…え、…こんな時間に誰…。
…務。
「はい」
「ちゃんと、部屋に居るんだな」
「務…」
確かめに来たの?
「ふぅ。…それだけだ。居たらいいんだ。じゃあな」
「あ、務…」
…。
「メールして、部屋に居るのかって聞いても解らないもんな。あ、疑ってる訳じゃないから。こうして来てみて、顔を見て…、だから良かった。それだけだ」
…。
「まさか、今から出掛けたりはしないよな?」
「出掛けない」
「…うん。じゃあな」
…。
たったこれだけの為に来たなんて。務の言う通りではある。居なくても、居るって伝える事はメールでも電話でも出来てしまうから。
でも、…それは、そんな事をするようでは、信用はもう無いと同じになる。
私は務を信じられないと言ってしまってるし、私のしている事だって…。
務にしてみれば、疑いたくなるに決まってる。
ブー、…。
【心配で来たんだからな。疑って来た訳じゃない】
…あ、…。務。