愛されたいのはお互い様で…。

「こんにちは…」

お店の方のドアが開いてたので声を掛けた。
…居ないのかな?訪ねると伝えてるあるのだから留守って事はないだろう。

「紫さん、こっちです」

ドアを開けておいたのだろう、工房の方から声がした。

…入っていいかな。いいよね。


「少し片付けていました。待ってましたよ…いらっしゃい」

「お茶を頂きに参りました」

目的は明確に、念押ししておく事にした。それ以外ないって。

「プリンを作って貰うのもですよ?
早速…善は急げです。部屋の方に行きましょう」

「あ、はい」

伊住さんはエプロンを解いて椅子に掛けた。
軽くパンパンと叩いた。


リビングは今日も明るく開放的で、硝子戸の開けられた庭から気持ちいい風が吹き込んで来た。
あぁ、やっぱり腕を引き上げて伸びをしたくなる…。
はぁ、気持ちいい。
隣で伊住さんも同じ事をしていた。

「あ」

「私も、よくこうしてますよ」

何だかな…。

「…あ、プリン、作らないと」

「はい。急かなくていいですよ。台所、好きに使ってください。この前のように」

「はい」


卵、牛乳を冷蔵庫から取り出し作り始めた。
伊住さんは、お茶を入れていた。

スーッ…この香り…。

「カモミール…」

「よくご存知で。ハーブティー、カモミールにしてみました。
プリンが焼けるまで歓談の時間です。
あ、これ、バニラ、使ってください。もしくは、洋酒もありますよ?」

「伊住さんは?どうされます?」

「私は極普通に、何も香り付けはなくて大丈夫です」

「では、そのままで」

温めておいたオーブンに入れた。

「後は待つだけですね」

「紫さん、…こっちに。座りましょう」

「はい」
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