愛されたいのはお互い様で…。

「…カモミールと言えば、最近、カモミールの花束が置かれていました」

「…ほぉ」

「今度は特に何も調べてないんですよ。薔薇もそうでしたが、贈り主も解らないですから、意味を知って悩むのもどうかと思って…」

「そうですか。その時の印象なんでしょうから、別にいいんじゃないでしょうかね」

「伊住さんはカモミールの花言葉、ご存知ですか?」

「さあ、どうでしょうか」

これは知ってるな…。お茶を飲むくらいだ、知らないはずはないと思う。何と言っても伊住さんだし。

「お茶としてのカモミールには鎮静作用…リラックス効果があると言いますよ。
…昨夜は眠れましたか?…今夜は眠れるといいですね…」

…まあ、眠れてないのは解ってしまうだろう。

…しかし、いとも簡単に頬に触れるなぁ…。
何故って顔をしたら、顔色を見る為でしたとか言われそうだし。
手を払わないのが許していると思われてしまうのかな。強い拒絶反応というのも、そこまでする感じとは違うし。場の空気というのもある。

「どこかにお出かけでしたか?午前中」

「え、はい。ちょっと近くのカフェまで…楽、しちゃいました。朝昼兼ねた食事に」

「そうでしたか」

「伊住さんは、今日は採寸とか、そういったお仕事だったんですか?」

「はい、ご新規さんがいらしてくれたものですから。紹介と言われては断れないものですからね」

「はあ、紹介者の方の顔もありますよね」

「そうですね。紫さんは誰にも言わないでくださいね、ここの事」

「あ、はい。今のところは誰にも言ってないです」

務には店の名前言ったかな。場所は具体的には言ってないはず。

「伊住さん、ピンヒールも希望されたら作りますか?」

「ピンヒール?」

何故だか、聞いていた。
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