愛されたいのはお互い様で…。
「明日はお仕事ですよね、月曜だから」
「はい」
やっと冷えたプリンをデザート皿に空け、食べるところだ。
「頂きます、紫さん」
「はい、どうぞ」
「…うん、美味しいですね。苦味と、かちっと固いこの感じがいいですよね。
お店でも提供したいくらいですがしません」
「え?は、い?」
「これは私だけのモノですから」
…スルーよ、スルー。
「知ってます?牛乳とお砂糖の代わりに、バニラアイスを使っても美味しく作れるんですよ?
バニラの風味も付いてますし。
お店で扱ってるスイーツは業者さんの物ですか?」
「はい、知り合いがいるのでそこから」
「アップルパイ、美味しかったです」
「そうですか、喜びますから伝えておきます。
ところで紫さん、たった一晩の事ですが、睡眠は別として、内面が、昨日よりも今日は、とてもすっきりしているような気がしますが、私の気のせいでしょうか?」
「すっきりですか…そう見えるなら心境に変化があったんだと思います。…あまり自覚はありませんでしたが」
遠慮なく強気な発言をしたからかな。
「自覚のない変化はいいかも知れませんね。無意識ですから」
「…実は、今日、偶然声を掛けられて、…別のというか、相手の女の人に」
偶然ではないのか。向こうは私のところに来たんだから。
「ああ、それで。それは…何というか…偶然ではないのでは?奇襲されたのですね」
まあ、会った時は、余裕のない顔をしてたかな。
「それで話をしたんです。私を気にする事はもうないからって」
「そんな…何を言ったんですか?あ、私が聞いてはいけないか」
「大丈夫です。私と務は終わったから、張り合う事はしなくていいって感じで。そしたら、意気消沈したみたいに、拍子抜けして帰りました。
私には、喧嘩をするくらいの勢いで声を掛けたのかも知れないのに。ぎらぎらしていたモノが帰る頃には消えていました」
「…そうでしたか。あっさり手に入ったと思ったのでしょうね」
「そんな感じですね」
「平気ですか?」
「え?」
「その…、務さんが、他の人と居ても、です」
「はい。…想像してしまいました。二人並ぶと凄く似合うだろうなって。実際、若くて綺麗な女性ですから」
…。