愛されたいのはお互い様で…。
・さようならは終わりじゃない
「初めは諦めようと思いましたよ。それとなく彼が居る事が解って。でも…。
彼が居て楽しいはずなのに、貴女が見せるのは複雑で困惑した顔ばかりだった。そういう場面に私が出会したというのもありますが。
足を濡らして歩いていた日も、雨に身体を濡らしていた日も。
昨日今日つき合い始めた訳でもないでしょうに…。今更、何に躓いたんだろうって思いました。
もしかしたら、これから先の事、結婚するしない、だとか、しないならどうするんだとか。具体的な話で纏まらなくなって、行き詰まっているのかと思いました。そういった事は気になる年齢でしょうから。
でも、どうやらそうでもないようだ。もっと根本なところ。
貴女は相手を疑ってしまうと言った。私は相手の人の事、理解出来るようにと助言したつもりです、…いい人の振りをして…その実、誘惑しながら…」
「…伊住さん」
「はぁ。…それでも、まだ貴女は変わろうとしない…。それでいい訳ないのに。
そして今は、終わった、と、あっけらかんとしている…。
何故、終わらせてしまうのか…はぁ。…思慮が足りないと思いますがね…」
「え?」
伊住さんは首を横に振る。
「もう言いません。
私の事は不思議な人と言ってくれればそうかも知れませんが、かなり癖が強い、変わり者です」
「はい、知ってます」
「はぁ、…だから困る」
「え?」
「貴女も変わり者だから、私の手の内を簡単に読んでしまう」
「読むなんて…そこまでは無理です」
「では、無意識に回避しているという事にしておきましょう。とにかくかわされてしまう」
「そうでしょうか…」
かわしきれてないから、容易くキスもされてしまうのに。
「そうですよ。例え貴女と始めたとしても、貴女が冷めてしまったら終わりだ。それを頭においておかなければ、貴女とは始められない」
私の性格に…冷たい、酷い人も加わってしまった。
「私の事をどう思いますか?」
…また。
「私…、こんなに自分も気づいていなかった性格の事、ずばずば言われた事がないんです。正直、ショックです」
「はい」
「でも、悪い気にはなりません、反対に言われて嬉しいくらいです」
「はい、そうだと思います」
「よく解るんですね」
「はい。好きな人の事は可能な限り、見てますから。少しでも知りたい…。
人が知ってて私が知らない事があるのも嫌だし、私だけが知っている事ばかりにしたい…」
…危険が迫ってる気がする。
「今、危険だと思ったでしょ…」
「はい」
「正解です。…でもこれは解り易かったですね。こういう場面なら…誰でも想像がつく事だ…」
抱き上げられた。