愛されたいのはお互い様で…。
「私もですが、紫さんも刹那主義的だ。だから、きっと私達は…合う。探り合ったとしても理解しやすいはずです。
一日一日でモノを考える質だ。…違う?」
…違わない。務に聞かれた時も私の考え方は一日単位だった…。
務に言われて、ずっと先の事を考えたんだ。
「違わないです」
ベッドに降ろされた。
「一日一日で考えてしまいます。…あ、待って」
伊住さんの唇、ぎりぎりのところで止まった。
「聞いてください。今、言わなくてもって、思うかも知れないけど」
「構わないですよ、何でも。まだ…今なら」
少しだけ顔が離れた。
「…はい。私、結婚は考えません。務とのことがあったからではありません」
「はい」
「でも、一緒には暮らしたい」
「はい」
「仕事も出来る限りしたい」
「はい」
「ずっと一緒に居られたとして、もし会社を辞めても、また違う仕事をしたいと思うかも知れない」
「はい」
「子供が欲しいと、強制みたいには言われたくない」
「はい」
…。
「はい、それから?」
「朝…」
「朝?」
「…朝、甘く起こしたいし、…たまには甘く起こされたい」
「勿論、それは当たり前の事ですよ」
「あ…」
「ん?」
「本当は、朝からそんなの…切り替えが難しいとか、言わないですか?面倒臭いって思わないですか?…今から仕事なんだからって」
「思いませんよ。毎日大事な一日ですから。好きはどんな形でも表現しますよ?」
「私…こんなことを、こんなときに言って、面倒臭い女ですか?」
「ん?そうですね、本当は…とても可愛らしい人ですよ?
我が儘なのに自分を出すのが下手な人です。聞きたい事も聞けない、…聞かない。可愛らしい事が中々言えない人ですから」
…我が儘を可愛いと思ってくれるなんて…唯一の救いかも知れない。
「もう、終わりですか?」
「はい、…大体は」
「浮かんだらその都度言えばいいんですから。いつでも言ってください?
例えば…、もういいからキスして…とかね」
「伊住さん…」
「紫…もう待ちませんよ」
「あ、待って」
「…はい?」
伊住さんの口を手で押さえ付けた。ぎりぎり間に合った。
「ずるいです、今、名前の呼び方を変えるなんて」
「…はぁ、今の待てはそれですか?」
「…はい」
「では、もう待ちませんよ」
「はい、もう言いません…」
「…紫」
伊住さんの手が頬に触れた。
「あ、待って」
「…何ですか…」
「あ…お風呂、お風呂入ってないですよ?…その…まだ、…汗流してないから…」
「汗は今からだってかきます。私は気にしません。後で流します。一緒に流せばいいんです。
どうしますか?」
「……では、…いいです、…どうぞ」
「フ、…貴女という人は…飽きさせない人ですね。可愛くて、…もう待ちませんよ?私が限界なんです」
ん。…ぁ。 だからと言って急いたりしない。伊住さんの口づけはいつも優しくてゆっくりと甘い…。
同じように、身体も隈なく甘く愛された。