愛されたいのはお互い様で…。
「ん…」
「ん?」
こんなにされたら、もたない、…堪らなく焦らされているみたいで。
「…もう」
「もう?…ん?」
…意地悪だ。私に言わせたいんだ…言わないんだから。
「…フ。…言わせてあげましょうか?」
あ。口を塞がれた。甘く唇を食み続けながら、身体は翻弄され続けている。口づけも深いモノに変わった。伊住さんの口づけ…攻められているようで、でも甘くて…蕩けそうになる。…ぁ。駄目、だ。…こんなの。
「ん…もう、駄、目」
「駄目?」
「もう…駄目です…」
「ん、解りました。では…これからですよ…」
ぇ…、ぁ。この、大人…一癖も…、二癖も…ぁ。
「紫さん…」
…何でしょう。
「花火…、見に行きませんか?」
え?花火?!今…返事?…今、聞きます?…。
「いい…ですよ」
「…いい?」
「はい。いいです。行っても…いいですよ」
「そうですか。では…、一緒に行きましょうか」
「はい。……あっ…」
………そういう事なのですね。言葉遊び…言わせたかったんだ。…この…エロ策士…ぁ。
「花火、いつあるんですか?」
どこのに行くんだろう。
「…いつだったかなぁ。ま、あるのは確かです。行きましょうね」
行くって言わない言い方はないかな…。今更だけど、何か代わりの言葉って。
「お供します」
うん、これでいい。
「浴衣、よく似合うと思うのですが、浴衣では外出禁止です。着るのは家の中だけにしておいてください」
「え?着たら出掛ける時は着替えないと駄目なんですか?」
「はい。浴衣姿は男子をとても誘惑しますから、刺激するのは危険です」
…。
「若い子じゃないから大丈夫です。過剰な警戒ですよ。それに伊住さんが一緒でしょ?だったら大丈夫じゃないですか」
「嫌なんです。紫さんの浴衣姿を周りの人に見せるのが。嫌なんです。私、只今もの凄く溺愛中ですから」
「私ごときに…そんな。だったら花火、行かないで、ここの庭でしては駄目ですか?何か、消防法とか、引っ掛かりますかね…」
「そうですね、多分、無理かも知れませんね。では、家の屋上から見ましょう」
「え、見えるのですか?」
「はい。辛うじて、小さく気持ち程度にね」
「もう…。だったら浴衣も着たままいられるじゃないですか。花火に行こうなんて言わなくても、見られるなら最初からここで充分です」
「そう聞かないと、いい、とか、一緒にいく、とか、言わせられなかったでしょ?」
「あ、…もう。それは、…そうかも知れませんけど…もう…」
「ハハハ。だからいいんです。いいですよね?」
「いいですよ?…え?今のは…」
「私、そろそろ…また大丈夫かと…」
手を取られて指先に唇を触れさせている。
「え?…あ、…」
「だから私は溺愛中だと言いました。だから…もう一度、です…」