MOON WOLF
私は黙って座った。

そうすると必然的に向かい合う形になるので、少し緊張した。

「お前」

「ん?」

「お前、何であそこにいた?」

言いたくない

言ったらバレてしまう

私がいらない子だって。

愛されてない、生まれてこなくて良かった子だって。

「わすれちゃった!」

私はケロッとおどけて見せた。

けど、愛斗の顔はただ私をじっと見つめていて

その目は私の何もかも見透かすようで

見透かされるのが怖くて俯いた。

「…なんで」

「なんでそんなこと聞くの?」



しばし沈黙が流れた。

「やっぱりいい。」

いいんだ。よかった。

「お前家どこ」

「南町ちょっと過ぎたところ」

「…送ってく」

そう言って部屋を出た愛斗。

それに私も続いた。
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