MOON WOLF
奥の部屋を出て、三人がいる部屋でサヨナラを言った。

そしてまたあの一階を通り抜けて、来たときと同様

高級車の後部座席に愛斗と並んで乗った。

車の中でもやっぱり愛斗は何も喋らなかった。

「ついたぞ」

乗っている間に眠ってしまっていたようだ。
愛斗が起こしてくれた。

「あ、うん。」

「運転手さん、ありがとうございました!」

そして私は車から降りた。

すると愛斗も降りてきて、

「愛斗もありがとう。バイバイ」

多分、もう二度と会えないであろう。

そう思うとすごく寂しい気分になった。

「マリア。」

静かな夜の闇に、ハスキーボイスが響き渡った。

初めて名前を呼んでもらえた。

なんだか感動して泣きそう。

「そんな悲しそうな顔すんな。会いたくなったらここに電話しろ。会いに来てやる。」

愛斗は私にきっと愛斗の電話番号であろう数字が書いてあるメモをわたした。

「…うん。」

私は俯いたまま、受けとった。

ほんとゆうと泣いてた。

声が震えてしまったけど、気づかれただろうか?…

「ん」

それだけゆうと、愛斗は車に戻って言った。

行かないでって言いたい。

なんでだろう

「愛斗!!」

「あ?」

「ありがとう!!」

私は目を見て言った。

泣いてるなんてもうどうでもいい。

「ん。」

もう一度短い返事。

でも今度はさっきと違って、あのポーカーフェイスの愛斗が、

私に向かって少し微笑んでくれた。
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