彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
「もう絶対に逃さない」
副社長は優しく私の手を取りソファーに座らせた。
自らもぴったりと私に寄り添って座り、私の右手を両手で挟むようにして握っている。
「まず、誤解を解きたい」
しっかりと真っ直ぐに私を見つめている。
彼が何を話すのか、何が誤解で何が真実なのか、たった今まで再会の喜びに浸っていたけれど、急に不安になり彼から視線をそらした。緊張で唇が震える。
「早希、逃げないで聞いて。知って欲しいんだ、俺のことを」
その声に顔を上げると、彼の瞳は真っ直ぐ私をとらえていた。彼の澄んだライトブラウンの瞳には力強い光があり、一切の動揺がない。
ゆらゆらと揺れている私の瞳とは真逆だ。
私も覚悟を決めた。
「はい」
私の手を握ったまま話し始めた。
「まず、副社長室にいきなり飛び込んできて抱き付いてきた人の事だけど、勝手に恋人だとか婚約者だとかと名乗っているだけで、そんな事実はない。
確かに二十歳前後の頃の遊び仲間の一人で、知り合いだった。
それだけだ。
取引先のパーティーで5年振りに再会したけど、仕事上のもので個人的にどうこうって話じゃない。」
二十歳前後の頃の遊び仲間
チクッと何かが胸に刺さった。
Barで会った女性が言っていた。『暇つぶし相手』
何も言わない私に反応することなく、彼は話し続ける。
「他にも嫌がらせを受けていたって聞いたよ。あのBarで」
私は何と返事をしたらいいかわからなくて自分の手元を見つめた。
「もしかして、早希は薫のことも誤解していないか?」
私はハッと目を見開き彼の瞳を見た。
「やっぱりか」
ふぅーっと息をついて「林の言う通りだった」
そう言って両手で握っていた私の手から右手だけ離すと自分の膝を殴った。
「ちくしょう。何で気が付かなかったんだ」
「こんなに早希を傷つけていて、気が付かないなんて、俺は本当にばかだ。でも、薫は俺の従妹なんだ。母の妹の娘」
え?従妹?
「薫の母親は薫が小学生の頃に亡くなってしまったから、薫にとって伯母である俺の母親を頼りにするようになっていてね。何かあるとすぐにうちの家族に泣きついてくるんだ」
でも、従妹だからって抱き合うなんてと思う。
「薫に対して恋愛感情なんて少しもないよ」
私の心の声がきこえたのだろうか?
彼はそう言ってまた両手で私の右手を優しく挟み込みさするようになで始めた。
「もしかして、名刺入れを副社長室に届けてと頼んだ時に薫の姿を見た?林が早希の様子がおかしかったって言っていた」
顔を傾け私の表情をのぞき込むようにして問いかける。
私はこくりと頷いた。
「2人が抱き合っているところを見てしまいました」
正直に言った。
「抱き合ってた、か。その通りといえばその通りだな……でも、あれは俺が早希を抱きしめるような感情のものじゃないんだ。
泣いていた薫を慰めていた。俺の中では薫は妹のようなものなんだ。言い訳に聞こえるかもしれないけど」
確かに言い訳にしか聞こえない。
女性が泣いていら抱きしめて慰めるの?
わたしはまた黙りこくった。
副社長は優しく私の手を取りソファーに座らせた。
自らもぴったりと私に寄り添って座り、私の右手を両手で挟むようにして握っている。
「まず、誤解を解きたい」
しっかりと真っ直ぐに私を見つめている。
彼が何を話すのか、何が誤解で何が真実なのか、たった今まで再会の喜びに浸っていたけれど、急に不安になり彼から視線をそらした。緊張で唇が震える。
「早希、逃げないで聞いて。知って欲しいんだ、俺のことを」
その声に顔を上げると、彼の瞳は真っ直ぐ私をとらえていた。彼の澄んだライトブラウンの瞳には力強い光があり、一切の動揺がない。
ゆらゆらと揺れている私の瞳とは真逆だ。
私も覚悟を決めた。
「はい」
私の手を握ったまま話し始めた。
「まず、副社長室にいきなり飛び込んできて抱き付いてきた人の事だけど、勝手に恋人だとか婚約者だとかと名乗っているだけで、そんな事実はない。
確かに二十歳前後の頃の遊び仲間の一人で、知り合いだった。
それだけだ。
取引先のパーティーで5年振りに再会したけど、仕事上のもので個人的にどうこうって話じゃない。」
二十歳前後の頃の遊び仲間
チクッと何かが胸に刺さった。
Barで会った女性が言っていた。『暇つぶし相手』
何も言わない私に反応することなく、彼は話し続ける。
「他にも嫌がらせを受けていたって聞いたよ。あのBarで」
私は何と返事をしたらいいかわからなくて自分の手元を見つめた。
「もしかして、早希は薫のことも誤解していないか?」
私はハッと目を見開き彼の瞳を見た。
「やっぱりか」
ふぅーっと息をついて「林の言う通りだった」
そう言って両手で握っていた私の手から右手だけ離すと自分の膝を殴った。
「ちくしょう。何で気が付かなかったんだ」
「こんなに早希を傷つけていて、気が付かないなんて、俺は本当にばかだ。でも、薫は俺の従妹なんだ。母の妹の娘」
え?従妹?
「薫の母親は薫が小学生の頃に亡くなってしまったから、薫にとって伯母である俺の母親を頼りにするようになっていてね。何かあるとすぐにうちの家族に泣きついてくるんだ」
でも、従妹だからって抱き合うなんてと思う。
「薫に対して恋愛感情なんて少しもないよ」
私の心の声がきこえたのだろうか?
彼はそう言ってまた両手で私の右手を優しく挟み込みさするようになで始めた。
「もしかして、名刺入れを副社長室に届けてと頼んだ時に薫の姿を見た?林が早希の様子がおかしかったって言っていた」
顔を傾け私の表情をのぞき込むようにして問いかける。
私はこくりと頷いた。
「2人が抱き合っているところを見てしまいました」
正直に言った。
「抱き合ってた、か。その通りといえばその通りだな……でも、あれは俺が早希を抱きしめるような感情のものじゃないんだ。
泣いていた薫を慰めていた。俺の中では薫は妹のようなものなんだ。言い訳に聞こえるかもしれないけど」
確かに言い訳にしか聞こえない。
女性が泣いていら抱きしめて慰めるの?
わたしはまた黙りこくった。