彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
「あの頃は薫から告白して林と付き合い始めたばかりで。薫も林の気持ちが自分にあるか自信がなかった。
そんな時に早希と林の噂話を聞いたらしい」
私と林さん?
「噂って?」
「林が早希のオフィスに会いに行ったとか、オフィスで堂々と食事に誘ったとからしい。でも、薫は噂だけじゃなくて林と早希の会話を聞いて疑いが強くなったって言うんだ。『ずいぶん二人は親しげに連絡を取っている』って」
それって、全部副社長と私の食事会のためだし。確かに私が逃げ回っていたせいでオフィスに来させてしまった。でも。だったら副社長か林さんが事情を説明すれば済む話だったんじゃ?
「薫は頻繁に俺に連絡をしては、不安を訴えてきたよ。その度に『そんなはずはない、心配いらない』と慰めていたのだけど。
結局は2人の間に信頼関係が出来ていないこと、薫が自分は林に相応しくないんじゃないかって思っていたこと、林がしっかりと薫に自分の気持ちを伝えていなかったことですれ違っていたってわけだ」
「林さんの気持ちがわからないって不安はわかりますけど、社長の姪で可愛くて評判のいい薫が林さんに相応しくないなんて事があるはずがないと私は思いますけど」
私は疑問に感じてストレートに聞いた。
副社長は、うん?とまた顔を傾けて私を見つめて言った。その視線は優しく甘い。
「じゃあ、早希はどうして俺から逃げたの?」
「今は薫の話で私の事は関係ありません。話をすり替えないで下さい」
ちょっとにらむようにして言ったけど副社長はすぐに切り返してきた。
「いや、違わない。いいから言って。どうして俺から逃げたの」
そんなの、決まってる。私と副社長じゃ住む世界が違うし、他に女性がいる副社長の近くにいるのが辛いから。
私は無言で唇をぎゅっと噛みしめた。
「俺も早希にしっかりと自分の気持ちを伝えていなかった。ベッドで囁く言葉なんて早希が本気にするはずがないのにな」
そんな時に早希と林の噂話を聞いたらしい」
私と林さん?
「噂って?」
「林が早希のオフィスに会いに行ったとか、オフィスで堂々と食事に誘ったとからしい。でも、薫は噂だけじゃなくて林と早希の会話を聞いて疑いが強くなったって言うんだ。『ずいぶん二人は親しげに連絡を取っている』って」
それって、全部副社長と私の食事会のためだし。確かに私が逃げ回っていたせいでオフィスに来させてしまった。でも。だったら副社長か林さんが事情を説明すれば済む話だったんじゃ?
「薫は頻繁に俺に連絡をしては、不安を訴えてきたよ。その度に『そんなはずはない、心配いらない』と慰めていたのだけど。
結局は2人の間に信頼関係が出来ていないこと、薫が自分は林に相応しくないんじゃないかって思っていたこと、林がしっかりと薫に自分の気持ちを伝えていなかったことですれ違っていたってわけだ」
「林さんの気持ちがわからないって不安はわかりますけど、社長の姪で可愛くて評判のいい薫が林さんに相応しくないなんて事があるはずがないと私は思いますけど」
私は疑問に感じてストレートに聞いた。
副社長は、うん?とまた顔を傾けて私を見つめて言った。その視線は優しく甘い。
「じゃあ、早希はどうして俺から逃げたの?」
「今は薫の話で私の事は関係ありません。話をすり替えないで下さい」
ちょっとにらむようにして言ったけど副社長はすぐに切り返してきた。
「いや、違わない。いいから言って。どうして俺から逃げたの」
そんなの、決まってる。私と副社長じゃ住む世界が違うし、他に女性がいる副社長の近くにいるのが辛いから。
私は無言で唇をぎゅっと噛みしめた。
「俺も早希にしっかりと自分の気持ちを伝えていなかった。ベッドで囁く言葉なんて早希が本気にするはずがないのにな」