彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
「早希、愛してる。俺の側にいて。イヤならもう一度俺にイヤだって返事をして」
私の顔を自分の胸から少し離して私の目を見てそう言った。
愛してる
副社長が私を愛してる?
驚いた。何て嬉しい言葉なんだろう。
副社長と肌を重ねている時に何度か聞いた事があるけれど、あれはああいう時の常套句。
寝物語じゃなくて普通にそう言ってもらえただけでもう充分だ。
意を決して
「副社長、わたしはやっ…」
私が口を開くと同時に唇を副社長の唇でふさがれた。
やっぱり無理ですと言いかけて断ち切られる。
口が開いていたから副社長の舌が私の口内に侵入してくる。
ん、んっ!
私の頭はがっちりホールドされているし、腕を突っ張った位じゃ副社長の身体はビクともしない。
自分の舌で副社長の舌を追いだそうとするとそれは逆効果だった。お互いの舌が絡まり合い、余計にキスが深くなっていく。
ん、んっ、んっ。
苦しい。でも、酔ってしまいそうに甘い。このまま力を抜いて身体を委ねたくなってしまう。
でも、ダメ。無理。
息苦しくて、心が痛くて涙がこぼれる。
私の涙に気が付いた副社長は唇を離した。
「早希、もう一度答えて」
私の頬を両手で挟んで自分に向ける。
「私、副社長とはむ…んん」
無理ですと言おうとする前にまた唇を重ねてきた。
ああ。私に拒否をさせないつもりなのね。これが副社長の作戦。
でも、私も引くわけにはいかない。
何度も何度もこの攻防を繰り返して、私はもうぐったりだった。
副社長は一向に諦めてくれない。
私が拒否しようと口を開くと甘く激しいキスで妨害する。
もう何度目?
私は疲れ切ってしまい、何だかめまいがするような気がする。ため息をついてソファーの背もたれに寄りかかった。
もう身体に力が入らない。
副社長はフッと笑い、切なそうな目で私を見つめると私が口を開かないように私の口を優しく自分の手で塞ぎ、胸元に顔を寄せて唇を這わせてきた。
私にはもう抵抗する力は残っていない。