彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
姉が苦笑しながら私から真彩を受け取った。
「真彩、お兄さんにお休みを言おうね」
姉に促されてしぶしぶ頷いて
「康ちゃん、また来てね。おやすみなさい」
とキチンとご挨拶をしてバイバイと手を振った。
「真彩ちゃん、お休み。また必ず来るからね。それと、さっきの返事だけど。僕は早希ちゃんが大好きだから真彩ちゃんに応援して欲しいな」
立ち上がって姉に抱かれた真彩の頭を撫でて言った。
えええ。
固まる私。副社長ってそういう事を言う人でした?
「うんっ!」
満面の笑みで返事をした真彩は「康ちゃんまたねえー」と手を振り、姉にそのまま2階の寝室に連れていかれた。
どうしよう、今誰とも目を合わせられない。両親の前で恥ずかしすぎる。
一気に静かになったリビングだったけど、副社長が動いた気配がして振り向くと、副社長が私の両親に向かって背筋をピンと正して向き合っている。
「あ、あの」
母もおろおろとしはじめる。
一体今度は何が始まるの。
「お父さん、お母さん。先ほどは『早希さんとお付き合いをさせていただいている』とご挨拶をさせていただいたのですが」
と言い出した。
そう、副社長は玄関前で姉にそう言い、両親にもそう言っていた。
男の気配がない私を心配していた姉と両親は大喜びでリビングに招き入れお酒を飲み始めたのだ。
何か違うのかな。
いや、確かに違う。
私たちはまだお付き合いしていない。Barで出会っていきなり身体の関係から始まった。
まさか、そんな事を正直に話すのだろうか。
私は不安になってそっとワイシャツの袖をつかんで副社長の顔をじっと見た。
副社長はちらっと私を見て一瞬笑顔を見せたけど、すぐに両親に向き直り真剣な表情を見せた。
「私は先ほど言ったことより一歩前進させていただきたいと思っています」
と胸元からカサッと1枚の紙を取り出して両親の前に広げた。
茶色のライン。
えっ?
婚姻届??
「久保山さん、これは?」
父が声を出した。
「はい。婚姻届です。私のサインはしてあります。保証人欄は社長である私の兄と早希さんの元上司の神田部長にお願いしました。今ここで早希さんのサインをしてもらうつもりはありませんが、私は早希さんとのお付き合いは結婚を前提とした本気のものだとご両親にご理解していただきたいのです」
そう言って頭を下げた。
私は驚きで言葉もない。
父は腕組みをして目を閉じてしまう。
母も驚いて固まっていたが、すぐに「頭を上げて下さい」と副社長に穏やかなに声をかけた。
「真彩、お兄さんにお休みを言おうね」
姉に促されてしぶしぶ頷いて
「康ちゃん、また来てね。おやすみなさい」
とキチンとご挨拶をしてバイバイと手を振った。
「真彩ちゃん、お休み。また必ず来るからね。それと、さっきの返事だけど。僕は早希ちゃんが大好きだから真彩ちゃんに応援して欲しいな」
立ち上がって姉に抱かれた真彩の頭を撫でて言った。
えええ。
固まる私。副社長ってそういう事を言う人でした?
「うんっ!」
満面の笑みで返事をした真彩は「康ちゃんまたねえー」と手を振り、姉にそのまま2階の寝室に連れていかれた。
どうしよう、今誰とも目を合わせられない。両親の前で恥ずかしすぎる。
一気に静かになったリビングだったけど、副社長が動いた気配がして振り向くと、副社長が私の両親に向かって背筋をピンと正して向き合っている。
「あ、あの」
母もおろおろとしはじめる。
一体今度は何が始まるの。
「お父さん、お母さん。先ほどは『早希さんとお付き合いをさせていただいている』とご挨拶をさせていただいたのですが」
と言い出した。
そう、副社長は玄関前で姉にそう言い、両親にもそう言っていた。
男の気配がない私を心配していた姉と両親は大喜びでリビングに招き入れお酒を飲み始めたのだ。
何か違うのかな。
いや、確かに違う。
私たちはまだお付き合いしていない。Barで出会っていきなり身体の関係から始まった。
まさか、そんな事を正直に話すのだろうか。
私は不安になってそっとワイシャツの袖をつかんで副社長の顔をじっと見た。
副社長はちらっと私を見て一瞬笑顔を見せたけど、すぐに両親に向き直り真剣な表情を見せた。
「私は先ほど言ったことより一歩前進させていただきたいと思っています」
と胸元からカサッと1枚の紙を取り出して両親の前に広げた。
茶色のライン。
えっ?
婚姻届??
「久保山さん、これは?」
父が声を出した。
「はい。婚姻届です。私のサインはしてあります。保証人欄は社長である私の兄と早希さんの元上司の神田部長にお願いしました。今ここで早希さんのサインをしてもらうつもりはありませんが、私は早希さんとのお付き合いは結婚を前提とした本気のものだとご両親にご理解していただきたいのです」
そう言って頭を下げた。
私は驚きで言葉もない。
父は腕組みをして目を閉じてしまう。
母も驚いて固まっていたが、すぐに「頭を上げて下さい」と副社長に穏やかなに声をかけた。