彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
・・・タヌキが手を回す

「部長が」
「そうだ。あのタヌキ、早希を手放すつもりはないなんて言いやがった。早希は俺のなのに」

部長・・・。
「ありがたいです。そんなに気にしていただいて」

「さあ、早希、家に送る。大事なご家族と話し合っておいで」

今夜は家族だけの方がいいと言う康史さんの意見に素直に従って私は帰宅した。

自宅の玄関を開けるとすぐに姉が顔を出した。
「お帰り、早希。お父さんもお母さんも待ってたわよ」

私が驚いた顔をすると、
「康史さんから電話をもらってたから。「今から早希を返します」って」
姉は笑っていた。

「ほんとにデキる男って感じだよね。彼以上のオトコなんてこれから先の人生で出会わないかも。逃げられないように努力しなさいよー」

「そうかもね」

本当にそう思う。私が康史さんに出会ったのは奇跡だ。あの日、あのバーで一緒になったのも奇跡だ。
幾つかの偶然が重なって奇跡が生まれるのだと思う。

それをどうするかは自分自身だ。
だから私はもう康史さんと離れる選択はしない。

リビングに入ると両親が待っていた。
二人とも笑顔だ。

私は両親と姉に素直に気持ちを伝えた。




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