彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~

稔はもう絶対に私の所には戻らない。
それだけは決まっていて覆らないし、私ももう稔の事は受け入れられない。

私たちはうまくやっていると思っていたのはどうやら私だけだった。
こんな形で終わりを告げた稔の不実さにも自分の鈍感さにもあきれ果てた。

だから、もう私の生活から稔の存在を全て消してしまいたいと思った。

彼の荷物は段ボール箱に詰めた。そして、ゴミ袋を広げて彼を連想させるモノは全て捨てる。ペアの食器、稔が愛用していたコップ、タオル、シーツや枕、雑誌まで。自分でもやり過ぎだと思うほどに。

でも、それ程稔のことはもう思い出したくない。

稔と知り合ったのは大学1年の時。稔は1年上の先輩。付き合い始めたのは私が4年生の頃だった。
優しくて協調性がある。ノリがよくて仲間を大切にする。そんな印象の先輩から告白されて自分が特別になれたことが嬉しかった。
付き合い始めてもうすぐ4年になる。

昨夜稔と一緒にいた里美は私と稔のサークルの後輩で私より2年下。
昔から私という彼女がいると知っているのに何かと稔に話しかけてくる子だった。
稔と同じ会社に入ったと聞いた時には少し嫌な気がしたけど、まさか略奪されるとは思わなかった。

考えれば考えるだけ嫌な気持ちになり寒気がする。
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