彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
副社長が電話を終えて戻ってきた。
「早希さん、済まなかったね。もうここはいいかい?」
私は振り返りぎこちない笑顔を向けた。
「はい。ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「よかった。社長に伝えておくよ。じゃ、出ようか」
副社長が私の横に並びエスコートをするように私の腰の辺りに微かに触れる。
「あのっ」
思い切って副社長の顔を見た。
「今夜はお付き合いいただいて、本当にありがとうございました」
頭を下げて更に言う。
「これで社長命令の会食の業務は終わりですから、副社長は私の事は気にせずお帰り下さい。私は1人で帰れますし・・・それと、あの夜の事は誰にも話しません。だから、副社長も忘れて下さい」
そこまで一気に話して顔を上げると、副社長は明らかに不機嫌そうな表情をしていた。
「早希さん」
低い声で呼ばれた。
あの夜も今夜も私は穏やかな副社長しか見たことがないから、少し怖い。
ビクッとして一歩後ろに下がってしまった私の右手首を副社長はサッと掴んだ。
「逃げないで」
「あ、いえ、逃げるつもりはありません」
私は思い切って正面から副社長と視線を合わせた。
「副社長はお忙しいと聞いておりましたので、早くこの業務から解放してあげなくてはと思いまして」
それを聞いた副社長はふっと息をついた。
「ごめん、怖がらせるつもりは無かった。ただ、場所を変えて早希さんともう少し話をさせてもらえないか?」
私は驚きまばたきをした。
そうだよね。あの夜の相手が社員だとわかった以上、一度しっかりと話をする必要があるだろう。
私はこくりと頷いた。
「早希さん、済まなかったね。もうここはいいかい?」
私は振り返りぎこちない笑顔を向けた。
「はい。ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「よかった。社長に伝えておくよ。じゃ、出ようか」
副社長が私の横に並びエスコートをするように私の腰の辺りに微かに触れる。
「あのっ」
思い切って副社長の顔を見た。
「今夜はお付き合いいただいて、本当にありがとうございました」
頭を下げて更に言う。
「これで社長命令の会食の業務は終わりですから、副社長は私の事は気にせずお帰り下さい。私は1人で帰れますし・・・それと、あの夜の事は誰にも話しません。だから、副社長も忘れて下さい」
そこまで一気に話して顔を上げると、副社長は明らかに不機嫌そうな表情をしていた。
「早希さん」
低い声で呼ばれた。
あの夜も今夜も私は穏やかな副社長しか見たことがないから、少し怖い。
ビクッとして一歩後ろに下がってしまった私の右手首を副社長はサッと掴んだ。
「逃げないで」
「あ、いえ、逃げるつもりはありません」
私は思い切って正面から副社長と視線を合わせた。
「副社長はお忙しいと聞いておりましたので、早くこの業務から解放してあげなくてはと思いまして」
それを聞いた副社長はふっと息をついた。
「ごめん、怖がらせるつもりは無かった。ただ、場所を変えて早希さんともう少し話をさせてもらえないか?」
私は驚きまばたきをした。
そうだよね。あの夜の相手が社員だとわかった以上、一度しっかりと話をする必要があるだろう。
私はこくりと頷いた。