彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
それから3人で楽しく飲んだ。
「そういえば、谷口って社長秘書の林さんと知り合い?」
高橋が急に言うからドキッとした。
動揺を隠して返事をする。
「あの抽選会の件でで知り合っただけよ。何で?」
「いや、さっき言った一緒に残業してたメンバーの一人が林さんだったんだよ」
私は息をのんだ。
「もしかして、私の怒鳴り声を聞いてたとか、怒鳴っていたのが私だと林さんが気が付いたとかそういう事?」
「当たり」
「何でそうなるのよ」
「お前が電話口で怒鳴るから『谷口、落ち着け』って言ったのが聞こえたらしいんだよ。で『電話のお相手は早希さんですか』って聞かれたわけ」
はあー。
次に林さんと顔を合わせることがあればかなり恥ずかしい。
「他にあれが私だって知ってる人は?」
「いや、たぶんいないんじゃないかな。あ、神田部長」
「神田部長か。もう部長にはいろいろ知られてるからいいや」
林さんの名前が出たことで、また副社長と薫の事を思い出してしまった。
今頃2人はどこで何をしているのだろう。
頭をふるふるっと振って2人の事を頭から追い出そうとした。
「谷口、お前今日何か変じゃねぇ?」
「そうなの、早希は悩める乙女なのよ」
高橋の問いには由衣子が返答してくれた。
「だから、高橋は踏み込まないでやって」と。
「ふーん」
高橋は横目で私を見て「ま、いいけどさ。飲み過ぎて俺に迷惑かけんなよ」と左の口角を上げてふんっと笑った。
すごく嫌味に聞こえるけど無視を決め込む。
残りのビールを飲み干した。
「明日も仕事だし、そろそろ帰ろうか」
私と由衣子は同じ方向だけど、高橋は反対。
なのに、駅まで送ると言い付いてくる。
今までそんな事したことがなかったのになぜ。
「いつも通り店の前でバイバイでいいのに」
由衣子が不思議そうな顔をする。
「何か裏があるか、企んでる気がする」
と私が言うと高橋は一瞬眉をひそめた。
「やっぱり何かある」
「いや、林さんにさ、女性に事件や事故がないように見届けるようにって言われたんだよね」
は?事件や事故?
「信楽焼事件とか?」と由衣子が笑い出した。
「あー、それ。やっぱりアレは事件だな」高橋も笑い出した。
「でもな、あの時、あの若造達が引いてくれたからよかったけど、そうじゃなかったら間違いなく揉め事になってたし、谷口だってどうなってたか」
高橋が恐ろしい事を言った。
「そうだね、気を付ける。ごめん」
私は素直に謝った。
「だから、駅まで送る」
高橋は私と由衣子の頭をポンポンと触り「ボディーガード代は明日のコーヒー」とニヤッとした。
「ハイ、カシコマリマシタ。イツモ、カンシャシテイマス」
勿論、お安いご用です。
「そういえば、谷口って社長秘書の林さんと知り合い?」
高橋が急に言うからドキッとした。
動揺を隠して返事をする。
「あの抽選会の件でで知り合っただけよ。何で?」
「いや、さっき言った一緒に残業してたメンバーの一人が林さんだったんだよ」
私は息をのんだ。
「もしかして、私の怒鳴り声を聞いてたとか、怒鳴っていたのが私だと林さんが気が付いたとかそういう事?」
「当たり」
「何でそうなるのよ」
「お前が電話口で怒鳴るから『谷口、落ち着け』って言ったのが聞こえたらしいんだよ。で『電話のお相手は早希さんですか』って聞かれたわけ」
はあー。
次に林さんと顔を合わせることがあればかなり恥ずかしい。
「他にあれが私だって知ってる人は?」
「いや、たぶんいないんじゃないかな。あ、神田部長」
「神田部長か。もう部長にはいろいろ知られてるからいいや」
林さんの名前が出たことで、また副社長と薫の事を思い出してしまった。
今頃2人はどこで何をしているのだろう。
頭をふるふるっと振って2人の事を頭から追い出そうとした。
「谷口、お前今日何か変じゃねぇ?」
「そうなの、早希は悩める乙女なのよ」
高橋の問いには由衣子が返答してくれた。
「だから、高橋は踏み込まないでやって」と。
「ふーん」
高橋は横目で私を見て「ま、いいけどさ。飲み過ぎて俺に迷惑かけんなよ」と左の口角を上げてふんっと笑った。
すごく嫌味に聞こえるけど無視を決め込む。
残りのビールを飲み干した。
「明日も仕事だし、そろそろ帰ろうか」
私と由衣子は同じ方向だけど、高橋は反対。
なのに、駅まで送ると言い付いてくる。
今までそんな事したことがなかったのになぜ。
「いつも通り店の前でバイバイでいいのに」
由衣子が不思議そうな顔をする。
「何か裏があるか、企んでる気がする」
と私が言うと高橋は一瞬眉をひそめた。
「やっぱり何かある」
「いや、林さんにさ、女性に事件や事故がないように見届けるようにって言われたんだよね」
は?事件や事故?
「信楽焼事件とか?」と由衣子が笑い出した。
「あー、それ。やっぱりアレは事件だな」高橋も笑い出した。
「でもな、あの時、あの若造達が引いてくれたからよかったけど、そうじゃなかったら間違いなく揉め事になってたし、谷口だってどうなってたか」
高橋が恐ろしい事を言った。
「そうだね、気を付ける。ごめん」
私は素直に謝った。
「だから、駅まで送る」
高橋は私と由衣子の頭をポンポンと触り「ボディーガード代は明日のコーヒー」とニヤッとした。
「ハイ、カシコマリマシタ。イツモ、カンシャシテイマス」
勿論、お安いご用です。