彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
待っている人がいるはずなのに副社長は真っ直ぐ帰ることをしなかった。
ドライブだと言って景色の良い所を回ったり、カフェに立ち寄ったり。
都内に戻ると夕食を誘われたがさすがにお断りをした。
副社長の帰りを待っている人がいるのに、そんなに一緒にはいられない。
副社長は残念そうだった。
「じゃ次回に誘うことにする」
そう言ってあの穏やかな笑顔を見せてくれた。
ああこの笑顔が大好きだ。
駅でいいと言ったのに私のアパートの前まで送ってくれた。
「ありがとうございました。本当に楽しかったです。夢のようでした」
これは本心だ。
助手席でぺこっと頭を下げると副社長は私の手を握った。
「ホテルを出る時から元気がなかったね。疲れさせちゃった?」
私の顔色を窺うように聞いてくるからドキッとする。
「いいえ、そんなことないですよ」
慌てて取り繕ってしまったから却って怪しまれてしまったかもしれない。
「早希」
副社長は握った手をぐいっと引っ張り身体を寄せてキスをしてきた。
ああ、甘い。とろけそうだ。
短いキスだったのに一瞬で骨抜きにされてしまいそうになる。
「ありがとうございました!」
唇が離れたらすぐに車のドアを開けて飛び出すように降りる。
副社長の表情は見ないようにしながら車の外で頭を下げた。
「ああ、じゃまた連絡するよ」
副社長は私に向かい軽く手を挙げて車を発進させた。
私は去っていく副社長の車に向かって呟いた。
「お疲れさまでした・・・さようなら」
部屋に戻りスマホを取り出すと、実家の姉からの着信とメールが何件も入っていた。
金曜日の夜からずっとスマホはバッグの中に入れたままだったから気が付かなかった。
メールを読まずに電話をした。
「ごめん、お姉ちゃん何?」
「あ、早希。返信ないから心配したわよ」
「うん、ちょっと置き忘れてて。で、何?何かあった?」
この週末に何をしていたか聞かれないように先に用件を聞いた。
「実はお母さんがね」
母が腰椎椎間板ヘルニアの手術をする事になったという。
「ずいぶん勝手だってわかってる。だけど、早希ちゃん今回はちょっと助けて欲しいの」
電話の向こうの姉は本当に困っている様子だった。
ドライブだと言って景色の良い所を回ったり、カフェに立ち寄ったり。
都内に戻ると夕食を誘われたがさすがにお断りをした。
副社長の帰りを待っている人がいるのに、そんなに一緒にはいられない。
副社長は残念そうだった。
「じゃ次回に誘うことにする」
そう言ってあの穏やかな笑顔を見せてくれた。
ああこの笑顔が大好きだ。
駅でいいと言ったのに私のアパートの前まで送ってくれた。
「ありがとうございました。本当に楽しかったです。夢のようでした」
これは本心だ。
助手席でぺこっと頭を下げると副社長は私の手を握った。
「ホテルを出る時から元気がなかったね。疲れさせちゃった?」
私の顔色を窺うように聞いてくるからドキッとする。
「いいえ、そんなことないですよ」
慌てて取り繕ってしまったから却って怪しまれてしまったかもしれない。
「早希」
副社長は握った手をぐいっと引っ張り身体を寄せてキスをしてきた。
ああ、甘い。とろけそうだ。
短いキスだったのに一瞬で骨抜きにされてしまいそうになる。
「ありがとうございました!」
唇が離れたらすぐに車のドアを開けて飛び出すように降りる。
副社長の表情は見ないようにしながら車の外で頭を下げた。
「ああ、じゃまた連絡するよ」
副社長は私に向かい軽く手を挙げて車を発進させた。
私は去っていく副社長の車に向かって呟いた。
「お疲れさまでした・・・さようなら」
部屋に戻りスマホを取り出すと、実家の姉からの着信とメールが何件も入っていた。
金曜日の夜からずっとスマホはバッグの中に入れたままだったから気が付かなかった。
メールを読まずに電話をした。
「ごめん、お姉ちゃん何?」
「あ、早希。返信ないから心配したわよ」
「うん、ちょっと置き忘れてて。で、何?何かあった?」
この週末に何をしていたか聞かれないように先に用件を聞いた。
「実はお母さんがね」
母が腰椎椎間板ヘルニアの手術をする事になったという。
「ずいぶん勝手だってわかってる。だけど、早希ちゃん今回はちょっと助けて欲しいの」
電話の向こうの姉は本当に困っている様子だった。