彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
久しぶりに由衣子とホテルのBarに行った。
あの会社の創立記念で使ったホテルだ。
「たまにはおしゃれなBarもいいわね」
由衣子がにっこりとしてカクテルで乾杯する。
「早希、本当に辞めるつもり?」
「辞めたくはないけどね。事情が事情だし」
「ね、早希の所の神田部長って元人事だし、顔も広いから辞めるにしても相談した方がいいわよ。きっと再就職だって相談に乗ってくれるはず」
「え、そうなんだ。うん、相談してみようかな」
そういえばタヌキは人事から来たんだって先輩方が言ってた。
使えるコネは何でも使いたいってのが本音。
「そういえば、由衣子は最近誰かいい人いないの?」
「んー?いい人ねぇ。いるといえばいる。いないと言えばいない…かな」
「何よ、それ。意味わかんない」
口をとがらすと由衣子は笑った。
「早希だって今は話したくないって話があるでしょ、私もそれよ、それ」
ドキッとした。
「そっか。わかった。私も由衣子に話せる時が来たら言うから。由衣子もね」
「もちろん」
2人でカクテルを飲み干した。
「さぁ、帰ろうか」
これからの事を考えると気が重い。パンプスのつま先を眺めてエレベーターを待っていると、開いたドアから親密そうに腕を組んだ男女が出て来た。
すれ違う時にうつむいていた顔を上げるとふいにその男性と視線が合った。
まさか。副社長。
私は大きく目を見開いた。
副社長も驚いていたようだ。
由衣子の腕をぎゅっと掴んでエレベーター内に引っ張り込んですぐに閉ボタンを連打した。
「早希!」
閉まる扉の向こうから副社長の声が聞こえたような気がする。
こんな所で会うなんて。
エレベーターが下降していく。
「早希、今のってうちの副社長だよね。何?何なの?」
「由衣子ごめん」
私は由衣子の腕にしがみつくようにして自分の身体を支えた。
「いいけど、大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。今夜泊めて」
あの会社の創立記念で使ったホテルだ。
「たまにはおしゃれなBarもいいわね」
由衣子がにっこりとしてカクテルで乾杯する。
「早希、本当に辞めるつもり?」
「辞めたくはないけどね。事情が事情だし」
「ね、早希の所の神田部長って元人事だし、顔も広いから辞めるにしても相談した方がいいわよ。きっと再就職だって相談に乗ってくれるはず」
「え、そうなんだ。うん、相談してみようかな」
そういえばタヌキは人事から来たんだって先輩方が言ってた。
使えるコネは何でも使いたいってのが本音。
「そういえば、由衣子は最近誰かいい人いないの?」
「んー?いい人ねぇ。いるといえばいる。いないと言えばいない…かな」
「何よ、それ。意味わかんない」
口をとがらすと由衣子は笑った。
「早希だって今は話したくないって話があるでしょ、私もそれよ、それ」
ドキッとした。
「そっか。わかった。私も由衣子に話せる時が来たら言うから。由衣子もね」
「もちろん」
2人でカクテルを飲み干した。
「さぁ、帰ろうか」
これからの事を考えると気が重い。パンプスのつま先を眺めてエレベーターを待っていると、開いたドアから親密そうに腕を組んだ男女が出て来た。
すれ違う時にうつむいていた顔を上げるとふいにその男性と視線が合った。
まさか。副社長。
私は大きく目を見開いた。
副社長も驚いていたようだ。
由衣子の腕をぎゅっと掴んでエレベーター内に引っ張り込んですぐに閉ボタンを連打した。
「早希!」
閉まる扉の向こうから副社長の声が聞こえたような気がする。
こんな所で会うなんて。
エレベーターが下降していく。
「早希、今のってうちの副社長だよね。何?何なの?」
「由衣子ごめん」
私は由衣子の腕にしがみつくようにして自分の身体を支えた。
「いいけど、大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。今夜泊めて」