彼女の居場所 ～there is no sign 影も形もない～

there is no sign

影も形もない

早希がいなくなった。

いきなり抱き付いてキスしてきた女を振り払っていたら、副社長室から飛び出してしまった早希を追うのが少し遅れてしまって彼女を見失った。

携帯電話は繋がらない。

早希のオフィスのデスクに行ったがいなかった。

アパートにも行ってみたが、部屋は真っ暗で人の気配は無い。

林に頼んでみたが、林も連絡が取れないという。

昨夜、早希と一緒にいた早希の同期の佐本さんに連絡をしたが、佐本さんにも早希の居場所はわからないと言う。

反対に「どうしてこうなったのか説明してください！」と怒鳴られてしまった。
彼女は早希の居場所を本当に知らないらしい。

人事課に実家の住所を聞こうと思ったが、時間外で担当者は帰宅した後だった。週末の休みで月曜日にならないと手に入らない。
残業していた人事のスタッフに副社長特権を使ってみたが、個人情報だということで拒否されてしまった。

後はどこを探せばいい？
早希が今どこにいるのかわからない。

運悪く、明日から5日間イタリアに出張が入っている。

海外出張前にどうしても早希に会いたかった。
だから、今日副社長室に来てもらったのに、それが仇になった。
まさか、あのタイミングであんな女が来て邪魔されるとは思ってもみなかった。

いや、昨夜だってホテルのエレベーターホールで俺は女と腕を組んでいた所を早希に見られている。
彼女はそういう相手じゃないし、勝手に彼女が腕を組んできただけだが、早希から見たらどっちでも同じだろう。
拒否しなかった時点でアウトだ。
もしかしたら、名刺入れが林から渡されたのも、俺が薫と一緒にいる所を早希に見られて誤解されたっていう可能性がある。
あの時連絡が取れなかったのは早希に急用ができたわけじゃなくて、拒否されていたのだと今になって気が付いた。

今頃になって自分の無神経さにあきれる。

早希、どこにいるんだ。
会いたい。
俺には君が必要だ。