彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
exist
「谷口さん、ちょっとお願い」

内線で社長室に呼ばれて行けば、社長、常務、専務が勢揃い。薄い頭や薄くない頭をすり寄せるようにして何か相談をしていた。

第1秘書の杉山さんが私を手招きした。

「来週からのプロジェクトで会議室の1つをオフィスとして使うから総務に頼んでデスクや事務機器を準備して欲しいの。足りないものは急いで手配してちょうだいね」

「何名位のチームでしょうか?」
神田部長の下にいた時もやった作業だ。

「多分、あちらからうちに常駐するのは3名かな。で、M支社からとうちの社員で合計10人分。会議の時はA会議室を使うからしばらくの間、A会議室はこちらのプロジェクトでキープでいいから」

あちらとかM支社って何の話だ。
うちの会社は隣のM市に支社はないはず。
どこか別の会社と合同プロジェクトなんだろうか。
機密事項も多いのか、秘書室で1番ひよっこの私にはさっぱり何の情報も無かった。

その他準備に必要な情報をもらって早速取りかかった。

社長室を退室する時に顔を上げた社長と目が合った。
このTHコーポレーションの高橋社長は50代前半の素敵なおじ様である。
いつもにこやかな社長だけど、さっきまで難しい顔をして常務達と話し合いをしていたのに、私と目が合うと何故だか特別にとびきりの笑顔だった。

何だろう?

疑問に感じつつ、総務に向かった。
どうやらかなり大きなプロジェクトらしいから、こちらも気合いを入れて準備しなくては。
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