クールな外科医のイジワルな溺愛

「なんだそのヘアバンド」

言われてハッとヘアバンドを隠した。百均で見つけて思わず買ってしまった、猫耳がついたヘアバンドを見られてしまった。二十五でこれは痛い。何の気の迷いかと思われる……。

「支度できたら、リビングに来い。朝食を恵んでやる」

「えっ、あ、ありがとうございます」

顔からぼたぼたと水を垂らしたまま話していると、先生が後ろから近づいてきた。

「ひい!?」

そのまま私の背中にくっつくようにして、洗面台の横の隙間にある棚に手を伸ばす。そこからタオルを取り出し、背後から渡してきた。

「この辺にあるものも、勝手に使えばいいから」

「あ、あ、ありがとうございます」

後ろから抱きしめられるのかと思った……。朝から心臓に悪いよ。この人はどれだけ私の胸をかき乱せば気が済むのか。

顔を拭いてぱぱっとメイクを済ませた私はリビングに向かった。本当はもっとじっくりメイクしたいけど、朝食を用意して待ってもらっていると思うと、のんびりはしていられない。

「おじゃましまーす。わあ」

テーブルの上には、おしゃれなサンドイッチがカゴの中に並んでいた。


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