クールな外科医のイジワルな溺愛
携帯のナビを使っていけばいいけど、Wi-Fi飛んでないとすぐ速度制限されちゃいそうだし。ルーター持ってないし。
「ん? 地下鉄で行くつもりだったのか?」
不思議そうにこちらを見る先生。ちょうどネクタイを巻いている途中だった手が止まった。
「はい? 他に何で行けと?」
ドクターなら自家用車でもタクシーでもいいだろうけど、私は一般庶民ですから。
「車で送っていってやるよ。地下鉄の階段、危ないだろ」
「うそ。そんなの悪いですよ」
「いいって。昨日みたいなことになったら大変だろ」
さらっと涼し気な顔でそんなことを言ってのける黒崎先生。昨日転びかけたのはたしかに怖かったけど、そんなに甘えてもいられないよ。私と先生は元主治医と患者でしかないのに。
「完治までは車通勤しろ。俺が送っていってやれるのは通勤時間が被った時だけだけど、ほら」
先生はぴらりと私に何かの紙を渡す。受け取って見ると、それはタクシーの回数券だった。
「飲むのが大好きな先輩医師にもらったんだけど、お互い忙しくてなかなか使わずに期限が迫っているから。遠慮なく使え」
「えええ……」