クールな外科医のイジワルな溺愛

遠慮なくと言われても。こんなに至れり尽くせりされたことがないから、戸惑ってしまう。

「タクシー嫌いか? 悪いな、さすがにうちに運転手はいなくて」

なぜかすまなさそうな顔をする黒崎先生。

「いえいえいえ、そんなこと望んでいませんけど……。すみません、ありがたく使わせていただきます」

これまでの展開から言って、遠慮しても先生は押し切ってしまう。ここは素直に受け取って、元気になったらお礼として何か贈ることにしよう。

「よし。じゃあ、それ食べて歯を磨いたら出発だ。ああ、それと」

「はい?」

まだなにか。

「病院以外で“先生”はやめてくれ。昨日からなにか違和感があると思っていたんだ」

「え……じゃあ、黒崎さん?」

そう言われても先生はお父さんの主治医だった時から“先生”だもの。うっかり先生って呼んじゃいそう。

「まあそれでもいいけど。お前、俺の下の名前知ってる?」

「何を突然」

そりゃあ知ってるよ。お父さんと私の主治医だったんだもの。手術の同意書にもベッドに付いている名札にも先生のフルネームが書いてあったじゃない。

「えっと……知ってるんですけど、読み方が……」

難しい漢字だった……日常であんまり使わない字。


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