クールな外科医のイジワルな溺愛
「なんでこんなところに。イタリアで仕事してたんじゃないの」
「任期を終えたから帰ってきたんだよ。ちょうど三日前から出社してる。見ないなーと思ってたけど、事故に遭って入院してたんだって? マヌケだな」
よくしゃべる奴。昔はお互いにこういう感じが楽しいと思ってつきあったんだっけ。
こいつが帰ってきたのがナミ先輩の言う『事件』だったのね。先輩は私が入社した時から一緒に仕事をしているから、司と付き合っていたのも知っている。今も彼の顔を見て口を押えていた。
「うるさいわよ」
久しぶりに会ってビックリしたからか、心臓がドキドキ言ってる。久しぶりに元カレに会って何も感じないわけじゃないけど、決してときめきじゃないんだから。
時計を見ると午後の始まりまであと十分。
「じゃあね! さよなら!」
私はいっそう騒がしくなりそうなその場から逃げた。事故に遭う前の日常と思うと、まるで異世界みたいに騒がしくて、嫌になっちゃうな。
松葉杖をつきながら、やっぱりひとりで仕事を片付けながら昼食を摂るべきだったと後悔していた。