クールな外科医のイジワルな溺愛
「えっと……そうね、同居人。今流行のルームシェアってやつ」
肝心のところはぼやかした。本当はただの居候なんですけどね。
「同居? お前、そういうのしそうな性格じゃなかったのに」
うっ。元カレは昔の自分を知っている。強敵だな。
たしかに私はひとりでいる時間が大好きだし、あんまり群れて行動したくないタイプ。映画もひとりで見たいし、外食もひとりで平気。自分のペースを守りたい人間なのよね……。
「色々と事情があって。怪我が治ったらお祝いして。じゃっ」
逃げるように松葉杖をついて司から離れる。会社から出てすぐの道路で空きタクシーを求めて手を挙げると、すぐに空車の赤いサインがついたタクシーが停まってくれた。
膝を庇いながら後部座席に乗り込み、ドアを閉めて黎さんのマンションの住所を告げる。ふと会社の方を見ると、取り残された司がこちらを寂し気に眺めていた。
目が合わないように下を向き、携帯をいじるふりをする。
久しぶりに元カノである私に会って、テンションが上がっちゃったのかな。何も後ろめたく感じることはないのに、胸の中がもやもやしていた。
思い出したくないのに、司と別れた時期のことが自動的に頭の中で再生される。