クールな外科医のイジワルな溺愛
お父さんの闘病が本格的になって、司とすれ違うことになった。それは仕方ない。私もお父さんのことばかりで、司にまで気を遣えなくなっていた。
でもね。
本当は、司に甘えたかったんだよ。お父さんのことで相談に乗ってほしかった。ううん、ただ話を聞いてほしかった。
だけど司は、そんな私が重かったのか、仕事が忙しいからと急速に距離を置いた。そのときのことは忘れられない。
私はとても裏切られた気持ちになって、もう男なんて信じるものかと思ったものだ。その後遺症は今も続いている。ひとりで生きていけばいいと思うようになったのは、司の影響も少しはある。
「今更遅いっての」
そんな未練があるような顔されても、お父さんが亡くなったと知った途端に飲みに誘われても、モヤモヤするだけでドキドキはしない。
別によりを戻そうって言われたわけじゃないけど、彼に再び心を開くにはだいぶ時間がかかりそう。
ぐうううとお腹が大きく鳴った。私は恥ずかしさのあまり寝たふりをして、まぶたを閉じた。