クールな外科医のイジワルな溺愛

「ちょっと待ってろ。すぐに用意してやる」

「用意?」

黎さんの後についてリビングからキッチンへ。袋から出てくるものを見ていると、頭の上にハテナマークが浮かぶ。

卵と粉チーズとベーコンと、トマトとアボカド。

なにをするのかと思っていると、黎さんは深さのある大きめのフライパンを取り出し、そこでお湯を沸かしはじめた。

「花穂、サラダ用意して」

サラダって……黎さんの手元をちらちら見ながらトマトを洗い、差し出されたまな板と包丁でカットする。アボカドも種をとって皮をむき、トマトと同じサイズに。

黎さんは戸棚を開け、そこから細長い保存ケースを取り出す。中には黄色いパスタの乾麺が。

「え、パスタ作れるんですか」

黎さんはお湯の沸いたフライパンに塩を入れ、麺を放り込む。

「本格的なものはできないよ」

にっと笑った黎さんは、フライパンに向き直る。私がトマトを移動させると、そのまな板を奪い、慣れた手つきでさっさとベーコンを切った。どうやらカルボナーラを作ってくれるみたい。

パスタをゆでるための深い鍋もなく、ソースを作るための生クリームもない。たしかに本格的ではないけど、チーズと卵でそれっぽいソースは十分おいしそう。

卵が固まってボロボロにならないうちに火を止め、パスタと絡めて簡単カルボナーラが完成した。


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