クールな外科医のイジワルな溺愛

それを運び、ダイニングテーブルに向かい合って座ると、やっと夕食の時間が始まった。

「おいし~い!」

黎さんが作ってくれたカルボナーラは、何故かお店で食べるものと同じくらい美味しかった。

「簡単でも、作ってすぐ食べるのってやっぱりいいよな」

本当にその通りだと思う。誰かが自分のために作ってくれたと思うと、余計に美味しい。いつもの半額惣菜だってチンすれば温かい状態で食べられるけど、やっぱり揚げ物が多くなるし、作りたてじゃないから微妙な味なんだよね。

「いつも自炊を?」

「できるわけないだろ。食べさせる相手がいないとほとんどやらないね。学生の時はアパートに集まった友達に食べさせるのが趣味だったけど」

「あ~わかります! 私もお父さんが亡くなってからやらなくなっちゃったなあ」

食べて『おいしい』って言ってくれる人がいるかいないかで、モチベーションはだいぶ変わるよね。

それにしても黎さんって器用なんだ。そりゃそうか、外科医だもんね。手先が不器用なわけがない。

お風呂掃除で空腹が限界を超えていたので、夢中でパスタを口に運んでいると、不意に視線を感じて手が止まった。

ゆっくり正面を見ると、黎さんが何も持たずに頬杖をつき、じっとこちらを見つめていた。まただ。珍しい動物を観察するような、この真剣な目。


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