クールな外科医のイジワルな溺愛
「こういうのも、平気?」
「は? こういうのって……」
「男として触れても、大丈夫?」
どういう意味か、一瞬わからなかった。けれど、すぐに思い当たる。さっきの話の続きだ。要は人の臓器や血を触った手で触れても気分を害さないか、そういうことを聞きたいんだろう。
「へ、平気じゃありません」
そう返すと、黎さんの目が寂し気にかげる。
「そういうことじゃなくて。黎さんの手が汚いとか、遺体や血が怖いとかでもなく。私が平気じゃないのは、恋人でもない人に異性として触れられても困るって意味です」
恋人でもない人に頬をなでられて、ドキドキしている。わけのわからない状況に、かなり困っているんだけど、自分でもどうして心臓が破裂しそうなほど動揺しているのかわからない。
「……その『困る』っていうのは、俺の事を意識しちゃって困るってこと?」
「うっ」
自分でもよくわかっていない気持ちを言い当てられて言葉がつまる。一瞬傷ついたような顔をしていた黎さんは、もう笑っていた。頬に触れていた手が移動し、首筋に触れて囁く。
「すごい。心拍数が急上昇中」
「や、やめてくださいっ」
ただでさえくすぐったくて仕方ないのに、首から人の脈拍計らないでよ。
なんとか黎さんの手を払いのけると、その手は懲りずに私の肩に回された。さ、さっきより密着度高くなってる~!