クールな外科医のイジワルな溺愛
「承服しかねるって顔してるな。うーん、よし。じゃあお試し期間を設けよう」
黎さんは呆気にとられている私が黙っているうちに、どんどん勝手に話を進めてしまう。
「その怪我が完治して、花穂がここを出ていくまでに俺のことを本気で好きになったら、仮じゃなくて本物の恋人になろう」
「ちょ、ちょっと待って。どうして私の気持ちに委ねるんですか」
「だって俺は、今すぐでも彼氏になっていいと思っているから。戸惑っている花穂に考える猶予をあげようってわけだ」
にっと行儀よく整列した白い歯を見せて笑う黎さん。
彼氏になってもいい? それって、黎さんは既に私のことが好きってこと?
いやそうとも言い切れないか。好きじゃなくてもなんとなく付き合いはじめる男女だっているものね。
「私のどこがいいんですか」
素朴な疑問を投げかける。黎さんだったらどんな女性でも思いのままだろう。もっと家柄が良くて、ものすごく頭が良くて、美人で……そんな人じゃなくて、どうしてこんな平凡な私なんかを?
「自然体で、面白いところ」
よどみなく、黎さんは答えた。面白い……。それって、女子にとってはあまり嬉しくないと言うか、素直に喜びにくい褒め言葉。