クールな外科医のイジワルな溺愛
嘘をついちゃった。少し罪悪感はあるけど、昨日はそれどころじゃなかったんだもん。今度黎さんに会ったらダメもとで頼んでおこう。
そんなことを考えたら、うっかり昨日の黎さんの顔が脳裏に浮かんでしまった。一気に体温が上昇してしまった気がして、デスクの隅っこに置いておいた冷たいエナジードリンクをグビッと飲み干した。
今日こそは、と昼休憩も出社途中のコンビニで買ったおにぎりで済ませ、誰とも無駄なおしゃべりをせずに仕事に取り組んだ。そのおかげで、終業時間の午後五時にはだいぶデスクの上の山が片付いて天板が見えてきていた。
いつの間に消されたのか、私の頭上の蛍光灯以外は光を失い、パソコンのディスプレイがやけに眩しく見えた。気づいて腕時計を見ると、午後八時になろうとしている。当然、オフィスに残っているのは私ひとりきり。
「よし、帰ろう。今日は頑張った!」
ここまでやれば、明日からはほぼ通常業務に戻れるはず。月末まであと何日だっけ。
カレンダーを見て、明日が土曜であることに気づく。入院中もそうだけど、勤務が不規則な黎さんといると、曜日の感覚なんてなくなってくるみたい。
体は疲れているけど、翌日が休みだと思うと気持ちが楽になってきた。今夜は黎さんがいないから、適当にお弁当でも買って食べて、ゆっくり寝よう。