クールな外科医のイジワルな溺愛
「で、誰と飲みに行ったのかな?」
国宝級の笑顔で尋ねてくる黎さん。
「えっと……会社の同期です」
目を合わせることはできなかったけど、声は震えなかったよね。だって嘘はついてないし。
「女の子?」
追及してくる黎さんが、とんと私のすぐ後ろの壁に片手をつく。
「あ、あう……だ、男子です」
メスのように鋭い光を放つ目で見つめられ、嘘をつけなくなった私は、正直に白状してしまった。
「へえ。俺の彼女なのに、他の男と食事に行ったわけ」
「でも、決してデートではなく」
「当たり前だよ。今度から二人きりで行くのはやめてもらっていいかな?」
下手な言い訳をしたら、語尾に被せ気味に注意された。耳障りは優しいけど反論を許さない圧力を持った言葉に口をつぐんだ。
「わかったならよろしい。さ、歯を磨いて。今日は俺とデートしよう」
「で、デート?」
壁から離れた黎さんを見返す。お酒臭いと言われた口を手で押さえたまま。
「今日はお休みなんですか?」
「じゃなきゃ誘わないよ。土日はオペの予約を入れないことにしているんだ。緊急が来ない限り、今日は一日休み」
そうなんだ。でも、緊急の連絡があればすぐ病院に駆けつけなきゃいけないんだよね。黎さんがどうしても無理な場合は、他のドクターが呼ばれるんだろうけど。