クールな外科医のイジワルな溺愛
「どこへ行くつもりですか?」
「ホテルでディナーなんてどうかな。しんどそうだし、夕方出発でいいだろ」
さすがドクター。私が昼からろくに動けそうにないことを言わなくてもわかってくれたみたい。いや、これだけお酒臭かったら一般人でもそれくらい悟るか。
「ホテルでディナー……」
夕方から出かけられるのはいい。けれど、また緊張しそうな場所へ行くのね……。昨日のような大衆向けのお店でも構わないんだけどな。黎さんが一緒なら、それだけで楽しいのに。って……私ったら、何を考えているんだろう。
「じゃあ、俺ももう少し寝る。花穂は夕方までに酒を抜いておいて。じゃあ」
黎さんは一方的に言うとさっさと部屋を出ていく。
まったく、強引なんだから……。
と思う一方で、黎さんとデートに行くと考えると、司に誘われた時とは比べ物にならないほど胸がざわざわする。
「デートかあ」
クローゼットを開ければ、この前黎さんに買ってもらったばかりのワンピースがある。水を飲んで、お風呂に入って、コンビニにブレスケアの飴と肝臓に効くドリンクでも買いに行こう。
始終緊張で胸がざわざわしているけど、それだけじゃないみたい。
夕方になって黎さんが再び部屋のドアを叩いた。そのときには昨夜よりよっぽどドキドキしている自分に気づいていた。