クールな外科医のイジワルな溺愛
黎さんにエスコートされて、初めて都内の高級ホテルに足を踏み入れた私はあんぐりと口を開けていた。
たどり着いた先はレストランではなく結婚式が開かれるような大宴会場。そこには華麗に着飾った男女が大勢集まっていた。白い壁に囲まれ、床には白い花の模様が描かれた青いカーペットが敷きつめられている。
「な、な、何ですかこれ」
「医者が集まる退屈なパーティー」
せっかく例のワンピースを着ていったのに、途中で強制的に立ち寄らされたお店でイブニングドレスに着替えさせられ、髪をセットされたときからおかしいとは思っていたけど、まさかディナーではなくパーティーだったとは。
「だまされた……」
これ、デートじゃない気がする。想像では、美しい夜景の見えるレストランで、二人きりのはずだった。テーブルマナーまで携帯で調べたのに、まさかの立食形式。
「退屈なパーティーだからこそ、花穂にいてほしかったんだよ」
「私が面白いからですね」
「そう。あと、傍にいてくれるとほっとするから」
招待状らしきものを取り出し、受付を済ませると黎さんは私に悪意のなさそうな微笑みを向ける。
卑怯なり。その顔でそんな風に言われたら、機嫌を損ねるタイミングを失うじゃない。
松葉杖は目立ちすぎるので、マンションに置いてきた。黎さんがそうしろと言ったから。膝の痛みはだいぶ改善されてきており、体重をかけすぎなければ激痛が走るということはない。彼の腕を借りれば、普通に歩けると思っていたけど、まさかこういうことだったとは。