クールな外科医のイジワルな溺愛
「デートだって言うから、半日楽しみにしてたのにな……」
ぼそりと呟いた。ぶっちゃけ楽しみにしてたのに、これはないよ黎さん。自分と黎さんのステータスの差をはっきり見せつけられただけじゃない……。
普段の黎さんは、とても気さくで、ちょっと強引なところもあって、いつも私をドキドキさせる。なのに……あんなに白々しい顔で無理して笑う黎さん、見たくなんてないよ。
一人で料理を食べる気にもなれず、持っていたお皿をウエイターに返して、壁際でただうつむく。
具合が悪くなったことにでもして、帰ってしまおうかなと思ったそのとき。
「ねえ、あなた大丈夫? 具合でも悪いの?」
とんとんと優しく肩を叩かれ、同時に花とも石鹸ともつかない嗅いだことないような良い香りが漂ってきて、ビックリして顔を上げた。
「あ、え、あの、大丈夫です……」
それだけ答えて、絶句してしまった。私に声をかけてきたのは、とんでもない美人だったから。ゆるやかにウエーブがかかった豊かな黒髪に、陶磁器のような肌。顔は毛穴レスで、お人形のように整っている。
可愛いというよりはカッコイイと言うのが相応しい大人の美人さん。だけどこの人、どこかで見たことがあるような。もしかして、テレビに出てる人とか?
ぼーっと見惚れている私の横から、もうひとつ足音が近づいてきた。